今回の暴落は、短期投資家筋の独り相撲だ やっぱり、2014年の市場は退屈だ

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つまり、市場は騒いでいるが、本質的には、米国にも日本にも何も起きていないということだ。米国、日本の実体経済は順調。もちろん、私は現在の政策に批判的ではあるが、今の流れが、短期的な波乱によって変化が起きるということはない、という意味で、順調なのだ(順調に悪い政策と長期的なリスク蓄積が続いている、というのが私の意見だが、それは今回は関係ない)。

ヤバいのは、アルゼンチンだ

一方、興味深いのは、新興国の事件だ。アルゼンチンはヤバい。マジにヤバい。アルゼンチンがヤバいのはいつものことで、皆なれすぎてしまっているが、これはヤバい。アルゼンチンの通貨、財政は破綻するだろう。

アルゼンチンの危機に関連して、トルコの通貨が大幅に下落、その他の新興国通貨も下落はしたが、それほど大幅なものではなかった。そして、当局は、大幅な利上げで対抗。利上げは予想されたが、上げ幅がエコノミストなどの予想を大きく上回ったものだったので、通貨市場としては、これを好感、通貨は回復し、日本の株価もいったんは戻った。

そこへ、FRBが淡々と量的緩和拡大ペースを縮小すると発表したため、新興国の混乱を配慮して、量的緩和拡大幅縮小を先送りすると期待していた投資家たちが株式を投げ売っている。これが、このところの流れだ。

ここで面白いのは、投資家たちの独り相撲が浮かび上がっていることだ。誰も反応しない。そして、新興国の当局ですら、実体的な問題(通貨は当事国にとっては金融であり実体である)として、冷静に断固とした対応をしており、市場の揺さぶりに動じない。株式市場などが右往左往しているが、FRBも動じない。そして、実体経済にも変化はないから、この騒ぎは金融市場、とりわけ先進国の株式市場と通貨市場の内部に留まるだろう。

これが今年、2014年を象徴していると思う。2014年は退屈な年であると同時に、金融市場やトレーダーの影響力がほとんどなくなり、実体経済主導の年になると思われるからだ。

FRBは世界の金融市場の一時的な混乱よりも、実体のある国内経済の動きに忠実な政策を採る。新興国の当局も動じない。そして、一部のトレーダーを除けば、短期の仕掛けには動じない。そして、実体経済はまったく揺るがない。これらは、実体経済の年、あるいは時代に入ったことを表している。

一方で今回のアルゼンチンの通貨危機は、金融的な危機ではなく、実体的な危機であることも重要であり、すべてを表している。今回の危機は、海外の投資家が資金を引き上げたことにより生じたものではない。国内の預金者が、インフレ危機、財政破綻からの預金封鎖を懸念して、自国通貨、預金を米ドル、海外資産、あるいは実体資産(株式や不動産)に移行しようとしていることが背景にある。

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