今回の暴落は、短期投資家筋の独り相撲だ やっぱり、2014年の市場は退屈だ

✎ 1〜 ✎ 35 ✎ 36 ✎ 37 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もはや、海外投資家はアルゼンチンに対する信頼がないから、スペインの銀行ですらアルゼンチンへのエクスポージャーは小さい。さらに言えば、民間企業には資金は入っても、そして株価は堅調であっても、誰も政府や通貨は信用しない。だから、海外資金の逃避は問題にならない。むしろ、実体として、その国の経済に生活している国民が投資資金でない、生活資金としての資産を移動させることにより起きているのだ。

アルゼンチンペソから米ドルへの交換に高率の課税がなされていて、今回、中央銀行は通貨の下落に対抗して、ドル準備を放出して防衛しようとしたのに、政府は、国民のプレッシャーに負け、この税率を引き下げたために、ペソからドルへ資金が動き、暴落となった。それが今回の危機であるから、これは実体的な危機であり、国際金融市場の危機ではない。

だから、国際的に伝播はしないし、同様に国内リスクのあるトルコは防衛した。したがって、今年、2014年の危機は、金融市場の危機であっても、それは金融による危機ではなく、実体経済からの危機なのだ。

だから、トレーダーサイドからの仕掛けは成功しないだろうし、長期的には無視されるだろう。やはり、2014年の金融市場は退屈な市場である。

逆に言えば、だからこそ、危機は大きく見えなくても、実質的であり、問題の根は深く、深刻だということである。今年生じた危機は、真摯に対応しないと大変なことになる。その場しのぎではなく、構造的な改革が必要だ。日本で言えば、金融政策ではなく、財政構造再建、10%への消費税引き上げ以上の政策が必要となるということだ。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事