「東京パラ」で日本の障害者行政は変われるか 大成功した「ロンドンパラ」に学ぶべき視点

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現地では、電動車いすで生活し、障害者やジェンダーフリーの雇用コンサルタントをしているトビー・ミルドン氏にも取材した。ミルドン氏によると、こうしたアクセスの改善はロンドンパラリンピックの開催をきっかけに進んだという。

しかし、決していいことばかりではない、とミルドン氏は言う。確かにパラリンピックの期間中は障害のある人がスポットを浴びて、選手もメディアに露出したが、大会が終わって時間が経つにつれ、その盛り上がりは消えていったと話している。

ロンドンパラ大成功の陰で悪化した政策も

イギリスの雇用コンサルタント、ミルドン氏は盛り上がりの一過性を危惧する(筆者撮影)

「障害のある人が注目されたのは大会の前後だけで、いまではその前の状況に戻っています。その理由には、メディアが継続して取り上げなくなったことが挙げられます。私が関わっている障害者雇用も、思ったほどには広がらず、まだまだ満たされているとは言えません」

ポスルスウェイト氏によると、景気低迷の影響から障害のある人の年金が一時的にカットされるなど、政策面でもパラリンピックの前より悪くなっている点があるという。「大成功」と言われるロンドンパラリンピックでも、7年が経ったいま、イギリス国内の社会に残ったものと、残らなかったものがあるのだ。

東京2020パラリンピックに向けて、今後国はバリアフリーのあり方を検討するなど、新たな政策を打ち出していくだろう。重要なのは、その政策が障害のある人を含めたあらゆる人のためになり、かつ、持続的なものになることではないだろうか。

東京2020によって、日本で障害のある人を取り巻く環境がどのように変わるのか、ロンドンパラリンピックを検証した研究者たちは注視している。

田中 圭太郎 ジャーナリスト・ライター

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たなか けいたろう / Keitaro Tanaka

1973年生まれ。1997年、早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年からフリーランスとして独立。雑誌やWebメディアで大学、教育、経済、パラスポーツ、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)、『ルポ 大学崩壊』(筑摩書房)。

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