「東京パラ」で日本の障害者行政は変われるか 大成功した「ロンドンパラ」に学ぶべき視点

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「日本には、障害のない人を指す『健常者』という言葉があります。障害イコール健康ではないという意味で、障害のある人と健常者を区別しています。しかし、四肢が切断された人でも健康な状態であることはありえます。つまり、日本は教育やスポーツ、交通アクセスなどさまざまな機会で障害者を区別して、隔離状態にしているために、障害者を理解する機会に欠けているのです。

もちろん、東京2020の組織委員会や国土交通省などが現在、バリアを取り除くための政策を進めています。それはそれでいいことですが、日本では障害者に対する態度を変える努力がもっとなされなければならないと感じています」

6月に開かれたシンポジウム。日英のパラスポーツ研究者20人あまりが参加(筆者撮影)

日本で障害者が健常者と区別されている現状は、どこに問題があるからなのか。その答えを探っているのが、同じくシンポジウムに参加した研究者のベリティ・ポスルスウェイト氏。

イギリスのウスター大学と桐蔭横浜大学で、パラリンピックが社会に与えるインパクトについて研究している。

ロンドンでは国が率先してバリアフリー整備

ポスルスウェイト氏は、ロンドンパラリンピックに関しては関係12団体、東京2020では8団体に聞き取りを実施して、政策面を中心に比較している。ロンドン大会を調査したところ、大会開催によって障害者をめぐる政策面で大きな転換があったと指摘する。

「政策面では、ロケットを打ち上げるくらいの非常に大きなインパクトがありました。イギリスは組織委員会とは別に、国が公社のような組織を立ち上げて、この組織が会場や街なかのバリアフリーの整備を推進しました。国が率先して、障害のある人が暮らしやすい基盤づくりに関わったのです」

ポスルスウェイト氏によると、その効果はロンドンだけではなく、イギリス国内のいろいろな地域にも及んだ。さらにハードだけでなくソフトへの充実にも向けられ、大会によって残されたレガシーを継続して運用する組織もできたという。

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