「女性=事務仕事」に寄せられる日本の問題構造 まわりまわって社会全体が硬直的になる

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本田:男性は女性よりも専門領域と仕事が関連していて、しかもそれが賃金につながっています。つまり、女性は「この人は何ができる人なのか」ということを正当に評価してもらえていない。配置としては圧倒的に事務系が多いです。

(出典:本田由紀「“大学での専門分野と仕事との関連度”が職業的アウトカムに及ぼす効果―男女差に注目して―」(RIETI Discussion Paper Series 19-J-001、2019)

「統計的差別」「無意識の偏見」はいまだ根強い

中野「女性は過去に辞めてしまう確率が高かったから」と期待をかけない、成長機会を与えないなどの「統計的差別」や、誰にでもバイアスが存在し女性や人種マイノリティの採用や昇進に不利に働く「無意識の偏見」の存在などが指摘されています。そういった理由で女性だからという理由で特定の業務に置かれやすいということですかね。

本田由紀(ほんだ ゆき)/1964年生まれ。東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育社会学。著書に『社会を結びなおす』(岩波書店)、『もじれる社会』『教育の職業的意義』(ともに筑摩書房)、『軋む社会』(河出書房新社)、『「家庭教育」の隘路』(勁草書房)、編著書に『現代社会論』(有斐閣)など(撮影:梅谷秀司)

今の話は正社員女性の話ですが、企業内で女性が正当に評価されていないことは、公平性の観点から是正されていくべきだと思います。

他方で、世界的に高学歴の人が同じく高学歴の人と大学や職場で出会って結婚するといった、同類婚傾向もありますよね。今議論していた企業内の正社員の男女格差の問題解決をすると、高学歴・正社員同士の夫婦は非常に収入面で恵まれていくことになる。

夫婦の年収がそれぞれ700万円以上のパワーカップルと、そうではないウィークカップル、あるいは共働きではない専業主婦世帯との経済面での差は開きます。だからといって高学歴女性の問題を解決しないでいいということにはならないとは思うのですが、こうした格差の問題にはどう取り組んだらいいでしょうか。

本田:理想論としては、男性稼ぎ主規範が消えるなどで同類婚など既存の傾向とは異なる多様な結婚が増える可能性がありますし、あるいは男性がややキャリアを降りるような形でオランダモデル(男女ともにワークシェアリングをして、共働きによって片働きの2倍にはならないけれど1.5倍にはなる)といった考え方もありうると思います。

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