とはいえ、習慣の違いから、やはり気になることがいくつか出てくる。代表的なのが、 箸の使い方である。大皿を全員でシェアしながら食事をするのが中国料理の醍醐味だ。最近では、正式な宴会では取り箸(お菜箸)があるケースも増えている。だがもともとの中国料理では匙と箸の併用が普通で、各自が直箸(じかばし)で食事をするのが一般的であった。香港やシンガポールでは直箸の習慣はあまりないようだが、少なくとも私の知るかぎり、大陸では直箸が当たり前だった。
文化の違いはあっても、箸の使い方には改善も必要
もちろん、日本人でも、食事のしつけができていない人に「嫌い箸」(忌み嫌われる箸の使い方)を注意しなければならないケースは当然ある。だが、頻度だと圧倒的に中国人の食習慣(特に冬場の鍋料理など)が気になるのだ。
文化の違いから来ることでもあるわけだが、中国人の箸の使い方は独特である。私から見た「中国人の気になる10の箸の使い方」は以下のとおりだ。すべての中国人がそうだというわけではないし、日本人だって決してほめられたものではない。私の勝手な意見で中国の人からすれば「とやかく言われる筋合いはない」としかられそうだが、ここは思い切って指摘させてもらう。
1)「突き箸」:日本人でも時々見るが「箸で料理を突く」所作。
2)「迷い箸」:料理を取るときにあちこちに迷う所作。
3)「探り箸」:好きな食材を探して、嫌いなものを取り除く所作。
4)「指し箸」:人や物をお箸で指し示す所作。
5)「寄せ箸」:遠くの食器を手元に寄せる所作。
6)「移り箸」:料理を取る手を止めて、他の料理に移る所作。
7)「掻き箸」:食器に口をつけて食べ物をかき込む所作
8)「渡し箸」:箸休めのときにお箸を器の上で横にかける所作。
9)「重ね箸」:同じ料理ばかりを繰り返し取る所作。
10)「振り上げ箸」:話しながら箸を振り上げる所作。
さて、ここまで書いてきて、洗練された中国人ビジネスマンの中にはお怒りの方もいらっしゃるかもしれない。だが、今回、最もお伝えしたかったのは、中国では「皆で楽しく食べることが食事作法だ」ということであり、文字どおり「箸の上げ下げ」ではないことを、ぜひご理解してほしい。
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