統合失調症の28歳女性が「切り絵」から得た希望

若い感性が伝統工芸に吹き込む「新たな風」

カッターを手に集中して作品に向かう姿に、「そんなに根を詰めて大丈夫なの?」と心配してしまう。しかし、坂下さんは「切り絵をすることが、自分にとっていい時間だと思っている」と話す。

切り絵に没頭する坂下さん。集中力が必要だ(記者撮影)

「今日はこれだけやろうと決めて実行し、眠る前に何ができたかをノートに書いてみる。そうすると充実感が得られます。行動が目に見える形になり、作品が少しずつ増えていく……。それに伴って、やりたいことが舞い込んでくるようにもなりました」

統合失調症をどう受け止め、どう考えるのか。考え方が変われば、生き方も変わる。精神疾患だけでなく、病気や老化をどう受け止めるかなど、あらゆる人にも通じる生き方の転換の術を、坂下さんも身に付けたということだろう。

最大の理解者は両親

坂下さんは「最大の理解者とは両親」と話す。とくに蒔絵師である父・信広さん(58)は坂下さんの創作活動を応援してくれている。コラボレーション作品もある。あんどん風の電気スタンドに切り絵をあしらったり、坂下さんが考えたカッターナイフの絵柄を蒔絵にしてくれたりした。

祖父・広さんも木地師だったそうだ。3代で輪島漆器に関わって生きてきた。「作品が売れたら、(売り上げは)父と半々にします」と坂下さん。統合失調症に影響を受けた切り絵の世界観や、独特の作風は、今となっては切り絵作家としての個性になっている。創作意欲は症状の改善に好影響をもたらした。また、若い感性が、伝統工芸に新風を吹き込むという効果も生まれている。

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