統合失調症の28歳女性が「切り絵」から得た希望 若い感性が伝統工芸に吹き込む「新たな風」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

カッターを手に集中して作品に向かう姿に、「そんなに根を詰めて大丈夫なの?」と心配してしまう。しかし、坂下さんは「切り絵をすることが、自分にとっていい時間だと思っている」と話す。

切り絵に没頭する坂下さん。集中力が必要だ(記者撮影)

「今日はこれだけやろうと決めて実行し、眠る前に何ができたかをノートに書いてみる。そうすると充実感が得られます。行動が目に見える形になり、作品が少しずつ増えていく……。それに伴って、やりたいことが舞い込んでくるようにもなりました」

統合失調症をどう受け止め、どう考えるのか。考え方が変われば、生き方も変わる。精神疾患だけでなく、病気や老化をどう受け止めるかなど、あらゆる人にも通じる生き方の転換の術を、坂下さんも身に付けたということだろう。

最大の理解者は両親

坂下さんは「最大の理解者とは両親」と話す。とくに蒔絵師である父・信広さん(58)は坂下さんの創作活動を応援してくれている。コラボレーション作品もある。あんどん風の電気スタンドに切り絵をあしらったり、坂下さんが考えたカッターナイフの絵柄を蒔絵にしてくれたりした。

祖父・広さんも木地師だったそうだ。3代で輪島漆器に関わって生きてきた。「作品が売れたら、(売り上げは)父と半々にします」と坂下さん。統合失調症に影響を受けた切り絵の世界観や、独特の作風は、今となっては切り絵作家としての個性になっている。創作意欲は症状の改善に好影響をもたらした。また、若い感性が、伝統工芸に新風を吹き込むという効果も生まれている。

若林 朋子 フリーランス記者
わかばやし ともこ / Tomoko Wakabayashi

1971年富山市生まれ、同市在住。1993年から北國・富山新聞記者。2000年まではスポーツ全般、2001年以降は教育・研究・医療などを担当。2012年に退社し、フリーランスの記者に。雑誌・書籍・広報誌やニュースサイト「AERA dot.」、朝日新聞「telling,」「sippo」などで北陸の話題・人物インタビューなどを執筆する。最近、興味を持って取り組んでいるテーマは、フィギュアスケート、武道、野球、がん治療、児童福祉、介護など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事