勤務中に送別会の準備で「処分」は妥当なのか 公用メールで呼びかけていたことも問題視

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今回の事件では、「公用メール」で送別会の案内状を送ったということも内規違反として処分理由の1つとなっています。この点に関しては、まず、正式に送別会の準備が公務の一環であると認定された場合は、公用メールを使用することに問題はないはずです。

しかし、公務とは認定できない場合や、公務扱いであってもセキュリティーの関係などで利用が難しい場合、「プライベート用のメールアドレスを全職員に聞いて回る」「出欠確認の回覧板を回す」「壁に出欠表を貼りだして記入してもらう」などの代替案が想定されますが、どれも非現実的ないし非効率的です。

「いい代替案は今のところない」

大阪府の担当者にも、仮に送別会や忘年会で公用メールが使えないことが確定した場合、どのような代替案を考えているのかを質問したところ、「いい代替案は今のところ思いつかない」とのことでした。

職員の福利厚生に資することですから、セキュリティー対策を検討したり、公用メールの利用に関する規定を改正したり、ガイドラインを定めたりして、送別会や忘年会に限らず、公式な職場行事に関しては公用メールを利用できるようにすることが現実的な対応なのではないでしょうか。

冒頭で述べたよう、大阪府では関係者への処分を検討中とのことですが、今回の件で、実際に処分を科すのは酷なのではないかと考えます。

その理由は3つあります。

第1は、すでに説明をしてきたように、今回の送別会の準備は、正当な「職務」の範囲内と解釈する余地があります。処分を先行させるのではなく、処分を行うのは、送別会の準備は職務ではないことが確定した場合に限るべきではないでしょうか。

第2は、仮に送別会の準備が職務ではないとしても、従来はグレーゾーンとして事実上許容されていたことを、外部から指摘があったからとはいえ、今回に限って処分をすることは、当事者にとって「不意打ち」であり、不公平になってしまうということです。

第3は、送別会の準備を公務中に行ったからといって、直ちに「公務の運営に支障を生じさせた」とは限らないということです。大阪府の定めた「職員の懲戒に関する条例」によりますと、具体的な処分の内容を定めた「別表(第二条関係)」には、今回の処分の根拠に近しい懲戒事由として、次の定めがあります。

勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせること。

報道されている内容や、大阪府への聞き取りを行った限りにはなりますが、送別会のメールを職務中に送信したことで、「公務の運営に支障を生じさせた」という事実は確認できなかったので、懲戒基準に照らし合わせても、本当に処分を課すに値するほどの違法性があったのか、疑問であるということです。

公務員は税金で給料をもらっているのだから、厳しく監視していくべきという考え方もあり、それも真実の一面です。しかし、公務員の方々が人間らしい職場環境で勤務して、充実した住民サービスを提供してくれることも重要な一面ではないでしょうか。

現在、大阪府が検討を始めているとおり、これまでグレーゾーンがあった「職務」の範囲に対し、具体的な基準を定めたうえで、その基準内で節度を持って送別会や忘年会などの福利厚生行事を行っていくという形が、大阪府の職員にとっても、納税者である大阪府民にとっても、納得感のある落としどころなのではないでしょうか。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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