勤務中に送別会の準備で「処分」は妥当なのか 公用メールで呼びかけていたことも問題視

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問題となるのは、今回の事件のように、送別会の幹事を任せられた職員が職務中に「準備」を行うことが許されるのかどうかということです。

この点、有志で自発的に行うような送別会については、民間企業であっても業務に当たらず、勤務時間中にグルメサイトなどを見ていたら注意や懲戒処分を受けても仕方ありません。

一方で、部署の責任者の指示によって企画された送別会については、多くの民間企業では業務として認識され、業務時間中に企画や出欠確認などをすることは、許容されていると思います。

今回は自発的なものだったのか?

公務員についても、部署の責任者からの指示や容認があれば、無制限に許されるのは行きすぎですが、長期勤続者に対する慰労や謝恩のための公式な送別会の準備ということであれば、社会通念上も、職務扱いとすることには理解が得られるのではないでしょうか。

今回の大阪府の送別会については、自発的なものだったのか、責任者の指示によって企画されたものだったのかは、「調査中」との回答でしたが、読売新聞の下記の報道が事実だとするならば、複数の部署の幹部の連名で送信されていることから、公式な送別会であった可能性が高いと考えられます。

府によると、案内状は7月1日付で、総務部と財務部の幹部名で同僚らに公用メールで送信された。(2019/7/27 読売新聞)

仮に「職務」として扱うことが難しいという判断になった場合であっても、今後に向けては条例による対応が考えられます。地方公務員法第35条では「条例に特別の定がある場合」には職務専念義務を免除できるとし、実際に大阪府では、「職務に専念する義務の特例に関する条例」を制定し、第2条で、免除できる場合を下記のように定めています。

府の職員は、次の各号の一に該当する場合においては、あらかじめ任命権者の承認を得て、その職務に専念する義務を免除されることができる。
一、研修を受ける場合
二、厚生に関する計画の実施に参加する場合
三、前二号に規定する場合を除くほか、人事委員会が定める場合
(※条文を一部簡略化している)

この免除項目の中に、「上長より指示された福利厚生行事の企画・推進をする場合」といった文言を追記する対応を取れば、法的には「職務ではないが許された行為」という扱いになります。

このように、条例で免除基準を定めるというアプローチは、大阪府職員の当事者に対して判断基準が明らかになるだけなく、免除基準が「見える化」されますので、大阪府民にとっても、ブラックボックスの中で無制限に規律が緩められるのを防ぐという意味で望ましい対応かもしれません。

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