日立、残された「上場4兄弟」はどこに向かうのか 売却か残留か、4つの子会社に「踏み絵」を迫る

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一方、日立製作所との取引がほかの上場3社よりも多い日立ハイテクノロジーズは、市況の影響が大きい半導体部門の事業売却が浮上する反面、医用向け計測機器関係は日立製作所から秋波を送られている。

日立製作所幹部は「ヘルスケアは統合してプレゼンスを高めていく必要がある。日立グループの強みは日立ハイテクの計測技術分野だ。これをベースにもう1回日立グループのヘルスケアを再構築する」と話す。

これに対して日立ハイテク幹部は「半導体もプレーヤーが減っており、足元で多少悪くても昔よりボラタリティ(変動)が高いとは思えない。製作所がどの事業を取り込もうが売ろうが、自らの経営計画の達成を目指すだけだ」と話す。

サービスを主体にした「脱製造業」へのシフト

グループ会社が戦々恐々とする中、日立製作所の東原社長が最も推進するのが自ら手塩にかけて育ててきたIoT基盤の総称であるLumada(ルマーダ)だ。ルマーダはあらゆる機器にセンサーをつけて収集したビッグデータを利用し、稼働状況を把握。機器の不具合などをAIデータ分析から事前に把握して修理するなど、顧客のさまざまな業務分析や課題解決などにつなぐ継続的なビジネスを目指している。

東原社長は日立グループの事業再編に向け、どのような決断を下すのか(撮影:梅谷秀司)

発電機器などプロダクトにもともと強い日立製作所だが、単体売りが中心になっていたのを改めて、サービスを主体にした「脱製造業」へのシフトともいえる。東原社長は「ルマーダはまだまだ行ける。売上高は2兆円を目指す」と豪語し、現在1兆円のルマーダをさらに伸ばす計画を掲げている。

社内では今、「レッツ!ルマーダ」とのかけ声で乾杯するなど、まさに“ルマーダ祭り”の様相だ。ライバルも従来とは違うアクセンチュアやIBMを想定しているという。

もっとも日立製作所は前期に利益率8%を達成し、グローバルレベルの高収益企業に変身したように見えるが、まだ世界に認められていないという不満は根強い。同社のある幹部は「利益率や売り上げなど収益では欧米とほぼ遜色ないのに、時価総額は大きく後塵を拝している。もっと事業を絞って、コングロマリットディスカウント(複合企業の企業価値が事業ごとの企業価値の合計よりも小さいこと)があるなら、それを解消しないといけない」と分析する。

世界と戦える日立グループを作り上げることができるか。再編は最後の総仕上げを迎えている。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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