日立、残された「上場4兄弟」はどこに向かうのか 売却か残留か、4つの子会社に「踏み絵」を迫る

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すでに売却手続きが進んでいるのが日立化成だ。日立金属と日立電線(現日立金属)と並ぶ日立グループの「御三家」の一角で源流企業だが、日立はリストラに聖域を設けない方針だ。

日立化成は通期で2期連続の営業減益中で、今2020期3月期も出足から厳しい。前期は調整後営業利益率が7%程度で、日立製作所が求めている目標からも遠く離れている。さらに2018年末には大規模な品質不正も発覚するなど厳しい状況に置かれている。

日立化成幹部は「資本政策の見直しは当社として2年前から考えていたことだ。どこと一緒になっていくかを含めて検討する時間軸になっているという認識があった」と明かす。親会社からの踏み絵ではなく自主的に考えた結果だと訴えるが、親会社に抗えなかったことは想像にかたくない。

同社の丸山寿社長はかつて、日立製作所の広報室長だったこともある。別の日立化成幹部は「親会社が日立であればメリットばかりだ。50%超の株式を保有してもらっているのでいろいろと守られているし経営もしやすい。日立から自ら離れるメリットは何もない」と本音が漏れる。

静観の構えを見せる日立建機

日立金属も「御三家」の一角だが、もともと独立心が旺盛で日立製作所との取引は少ない。ただ2010年には日立金属社長を日立製作所の副社長に異例の招聘をしてまでグループ一体感を強める方向に転じていた。

その後、日立金属と日立電線を統合。さらに日立化成との統合も模索していたが、日立化成を売却する方向に転じたことで、金属も立ち位置は微妙になっている。化成と同じく業績は振るわず、前期まで3期連続で減益となったうえ、今期も厳しい予想だ。

日立建機もまた日立化成や金属と同じく日立製作所との取引関係自体は薄い。最近はライバルで建機最大手コマツのようにIoTを使った建機サービスで日立との連携を深めようとしているが道半ばだ。

日立建機の平野耕太郎社長は「定期的に日立製作所の幹部とはコミュニケーションしているが、資本関係の話は出ていない」としたうえで、「ただ日立製作所が何を考えているか完全に知っているわけではない。いずれにせよ、ビジネスをしっかりやっていくだけだ」と静観の構えを見せる。

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