日産「デイズ」に東芝電池が採用された深いワケ あえて小型車の電池に力を注ぐ理由とは
東芝復活の試金石となるか――。
経営再建中の東芝が次の成長の柱に掲げるリチウムイオン2次電池「SCiB」で日産自動車から初めて受注した。日産が約6年ぶりに全面刷新した新型軽自動車「デイズ」に採用(共同開発した三菱自動車の新型軽「eK」にも採用)。東芝がカルソニックカンセイにセルを提供し、カルソニックカンセイがセルを集めてモジュール化して日産に納入を始めている。
新型デイズは簡易型となる「マイルドハイブリッドシステム」をラインナップに採用。減速時の車輪の回転力をモーターへ伝え、モーターで電気を発生させて蓄電池に充電し、加速時には電力として再利用する仕組みだ。デイズはリチウムイオンバッテリーを採用。モーターを小型化しながらも、新たに採用した東芝製蓄電池と組み合わせることで、エネルギーの回生量を従来に比べて2倍に引き上げている。
「新型デイズは東芝製電池でないと多くの条件を満たせなかった」。日産の開発エンジニアはそう明かす。自動車の運転は加減速が多いため、急速な充電が必要なうえ、高い耐久性と安全性が求められる。東芝製電池はこうした急速充電、安全、長寿命の評価が高く、使いやすいという。
「テスラへの搭載を目指すわけではない」
東芝はこれまでも小型車を中心とした車載用電池を受注してきた。スズキには「ワゴンRハイブリッド」や「ソリオハイブリッド」に提供。「マイルドハイブリッド」の要としてバッテリーに採用されており、減速時のエネルギーで効率よく発電・充電でき、蓄えた電力をエンジンのモーターアシストに使う低燃費化技術に貢献している。また三菱自動車にはEV(電気自動車)「アイミーブ」に提供。急速充放電や長寿命化、さらに低温下での充電と走行性能が評価されているという。
もっとも東芝の電池はパナソニックなど大手に比べて存在感がこれまで薄い。日産が最も打ち出している電動化技術「eパワー」に電池を供給しているのはパナソニックであり、EV大手のアメリカ・テスラに電池を大量供給するのもパナソニックだ。また中国のCATLなど世界大手が市場を席巻しており、東芝の名前を聞くことは少ない。
だが、東芝は意に介していない。東芝の高見則雄・研究開発センター首席技監は「われわれが狙っているのはロングドライブよりも、カーシェアなど近距離で利用頻度が高い領域」としたうえで、「長い距離はエネルギー密度やコスト面などで東芝製が不得意なのは確かだ。だが、逆にコミューターやコンパクト、シェアカーには合っており、そこで力を発揮できる。(高級EV車でロングドライブする)テスラへの搭載を目指すわけではない」と説明する。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら