日産「デイズ」に東芝電池が採用された深いワケ あえて小型車の電池に力を注ぐ理由とは
東芝は経営再建の過程で半導体メモリー事業などを売却して稼ぎ頭がなくなる一方、蓄電池事業を中期経営計画「東芝Nextプラン」の中で成長の柱に据えている。この4月から始まった同プランでは電池事業を子会社の東芝インフラシステムズから本体へ移管するなど、全社注力分野に引き上げたばかりだ。
東芝の車谷暢昭会長兼CEO(最高経営責任者)は1月末に行った東洋経済の単独インタビューで、「これからのデジタル社会のキーデバイスの1つは電池だ。汎用型でなく、東芝にしかできない高スペックのものを技術進化させ差別化した状態で、ブルーオーシャン(競争相手がいない市場)でどんどん投資したい」と断言。電池へのリソース配分を増やしたいことを明言している。
実際、東芝は電池開発を加速している。現在使用している負極材であるリチウムチタン酸化物(LTO)から高容量な新酸化物負極材としてニオブチタン酸化物(NTO)を開発。次世代2次電池として試作済みだ。
これを搭載した小型EVの場合、6分の充電で従来の3倍となる320キロメートルを走行することが可能で、2020年代前半の量産を視野に入れている。充放電を5000回繰り返しても90%以上の容量を維持することを確認済みで、超急速充電と長寿命化の長所を一段と伸ばせるという。電池劣化によるEV中古価格の低下を防ぐこともできるとして、高見首席技監は「経済性と利便性を両立させていく」と意欲的だ。
電池工場への投資を加速
生産面でも投資拡大を続けている。東芝は現在、インドでスズキとデンソーと合弁(東芝の出資比率は40%)で、スズキのグジャラート工場内で200億円を投じてバッテリーの生産準備を進めており、2020年をメドに量産する予定だ。インドでシェア5割近いスズキはこの合弁会社で生産したマイルドハイブリッド用バッテリーを搭載した車種をインド市場に大量投入していく方針で、東芝にとって海外拡大の牽引役となる。
また国内では唯一の製造拠点だった柏崎工場(新潟県)での生産増強が2018年度に完了。さらに横浜事業所内にも新たにリチウムイオン2次電池の生産工場を約160億円投じて新設する予定で、2020年の稼働を目指している。今後はEVなど電動車拡大が進むとみており、生産体制を構築していく狙いだ。
電池をめぐっては競合各社も巨額投資を進めている。東芝が今後も“ブルーオーシャン”と言って戦える保証はどこにもない。東芝は電池事業の業績を明らかにしていないが、売上高が200億円程度で赤字とみられ、現状では先行投資の厳しい状況が続いている。ようやく出てきた芽を大きな幹に育てられるか。今がまさに正念場だ。
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