古舘伊知郎が説く仕事で活きる「凝縮ワード」 40年超考え抜いた「言葉の世界」で見えたもの

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① 主語ずらしで切り抜ける

答えに窮するような質問や、何かしらの感想を求められたときに、「いいね」「おいしいね」「すてきだね」と肯定的に思えないとき、あなたはどんな答え方をしているだろうか? ついつい相手に合わせて褒めてしまったり、あまり好みでないのに「好き」と言ったりしているのではないだろうか。

こんなときに古舘が勧めるのが「主語ずらし」という手法だ。感想を求められて肯定できないとき、「主語ずらし」を使うとうまくその場を切り抜けられることがあるという。

古舘が新築の知人宅を訪れたときのこと、なかなかの立派な家だったそうだ。褒めちぎりながら部屋を見ていったら、1カ所、内装の一部で個人的に「あまり好きじゃないな」と思うところがあったそう。すると、まさにその箇所について「ここはどう?」と聞かれてしまったのだ。

「それは人によるよね」

インテリアデザイナーでもないので「よくないね」というのは身勝手だし、「いいね」と言うのも思っていないから言えない。そこで古舘は、「2人のうちどっちかは、かなり気にいったんでしょう?」と言った。すると、旦那さんのほうが「結構派手だと思わない?」とさらに突っ込んできた。「うーん」と一呼吸置いたあと、「それは人によるよね」と逃げた。

主語をずらして、彼自身は自分がいいと思っているのか、悪いと思っているのかは、いっさい言わなかったのだ。また、好きじゃないというニュアンスは打ち出しつつ、「よくない」とはっきり言うのは角が立つので、「どっちかは、かなり気に言ったんでしょ?」「人によるよね」と逃げたのだ。

また、こういうときの逃げ方で「独特ですね」というのもアリだと古舘は言う。「独特ですね」を使う場合は、「どう思う?」と聞かれたら、間をおいて、さらに、間をおいて、さらに、三間くらい置いてからゆっくりと見て、ニコッと笑って「……独特ですね」と言えばいいそうだ。

② 断定しないというテクニック

例えば、上司が自信満々で企画のプレゼンを終えたとしよう。正直、会議室の雰囲気は微妙だが、部下としては「ここぞ!」という一言をかけたい。そんなときに使えるのが、「控えめに言って、最高です!」という凝縮ワードだ。

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