日本人よ、真の「リア充」とは土地持ちの階級だ イケメンも外資系エリートも、結局、残念な人

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――帯状の扇状地ではなく、いっそ海外に移住するのはどうでしょうか。

日本国内でデフレが続いている間に、アジア経済が成長し物価が上昇したことで、国内物価とアジアの物価があまり変わらなくなってしまいました。1990年代後半ならばともかく、現在では、アジアへ行ってもよい暮らしができるわけではありません。

タイのバンコクの中心地では、日本のワンルームマンションのような物件が2000万円します。日本に比べれば安いですが、それでも2000万円です。フィリピンの物価はタイより安いものの、インフラが脆弱なので車なども購入しなければなりません。生活費トータルでは1カ月30万円はかかるでしょう。だったら国内の「帯状の扇状地」でいいじゃないですか。

――世間では引きこもりの問題が深刻化しています。彼らは仕事もせず、親の家に住んでいられるのですから、日本型リア充ですか。

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彼らは持つ者ではありますが、新規探索傾向はゼロ、またはマイナスなので、単に裕福というだけで「日本型リア充」ではありません。

――世代的に言えば、自動車で暴走する老人たちはどうですか。

プリウスで暴走する老人などが多い、と言われているそうですね。都内に住んで、一定以上の価格の自動車を保有しているのですから、資産を持つ勝者でしょう。そして、これだけ老人の運転は危ないと指摘されているのに、周囲の警告に耳を傾けず運転するのですから、何も考えていないことになります。彼らは日本型リア充、または日本型リア充老人といえるでしょう。

フィリピンも日本も、格差の本質は変わらない

――持つ者と持たない者の格差は、これから解消するのでしょうか。

私は東南アジアが好きでよく行きます。マニラの中心部マカティ地区には、金融機関や外資系高級ホテルが集中しているのですが、同地区の要所要所には検問が設けられて、機関銃で武装したガードマンが侵入者に目を光らせています。富裕層や日本人などの外国人はノーチェックで出入りできますが、フィリピン人のホームレスやストリートチルドレンは出入りできません。

マカティ地区ほどの露骨な隔離政策、階級差別はないにせよ、日本とフィリピンは本質的に変わらないのではないでしょうか。

とくに若年層の間に階級格差が広がっています。一人っ子が多く、相続税がかからないので、第4世代や第5世代にも、土地は簡単に相続されていきます。固着化した世襲は何百年も続く可能性があります。まさに日本の構造的な暗部です。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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