アラフォーの僕らから20代、30代の君たちへ 人生で大切なことはバンドブームから学んだ 

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僕たちは、バンドブームで炎上リスクを学んだ

昨年は、暑かったからか、若者がバイト先の冷蔵庫に入って、Twitterの写真をアップしまくった。ネット炎上もしまくりだった。

よかった、バンドブームの頃に、Twitterがなくて。というのも、当時のバンドは炎上しそうな武勇伝だらけだったからだ。

某著名バンドが、防衛大学校の学園祭に出演して「自衛隊、反対!」と叫び、怒号と戸惑いで異様な雰囲気になったらしいとか、そんな話がたくさんあった。まだ、これはロックっぽい政治的メッセージではあるが、ほかにもライブで、火を吐く、物を壊す、脱糞をする、ゲロを吐くなどのパフォーマンスをする者もいた。

今では、世界的にファンが多く、実際ワールド・ツアーなどもやっていて、トップアーティストとして数えられるX JAPANも、初期は色モノ的な扱いをされていた。特にインディーズ時代のX(X JAPANに改名する前)は暴力的バンドとして知られており、有名だった。最近のライブでも、YOSHIKIがドラムを壊すパフォーマンスなどを行っているが(ドラムセットに倒れるときに、痛くないところにさりげなく選んで倒れるのはいつ見てもうまいと思う)、当時は、小さなライブハウスでも火を吐く、ダイブをする、CO2ガスを撒き散らすなど、過激なパフォーマンスで知られていたし、ツアーで泊まったホテルの部屋を破壊したなど、まるで都市伝説のような武勇伝だらけだった。

バンドには、けんかもつきものだった。当時を知る方によると、1980年代後半の東京の居酒屋、特にライブハウスやスタジオの近くにある店には、「バンドマンお断り」「金髪お断り」という張り紙が本当にあったという。いや、具体的に「Xお断り」という張り紙もあったとか。実際、ライブが終わるたびに浴びるように飲むうえ、けんかが起こったり、逆に体育会ノリ、いや軍隊ノリで厳しい反省会などを開くバンドも存在した。バンドマンが迷惑だと思われていた時代があったのだ。

ブームが終わるとき、バンドが終わるとき

そのバンドブームだが、1990年代に入った頃に、急速にトーンダウンした。いか天の終了、バブル経済の崩壊など、ブーム終了のキッカケには諸説あるが、そもそもバンド自体にも寿命というものがあり、そのピークがきたのではないかとも言える。

バンドの解散の理由としてよく伝えられることが、「音楽性の不一致」「活動のための考え方の違い」などだが、この手の話を聞くたびに、私はあきれてしまう。というのも、それぞれ完全に一致するわけがないからだ。そもそも、音楽性や考えが違うからバンドは面白いのだ。一方、これらはやはり活動とともに変化するものである。

これは、古今東西のどのバンドでも傾向として見受けられるが、途中で音楽の方向性が広がっていき、大作志向になっていき、収拾がつかなくなる。音楽的主導権や、バンドの運営方針をめぐる対立もみられるようになる。これだけでなく、事務所のトラブル、メンバーのプライベートの問題などももちろんある

このとき、大人の事情で解散したバンドが多数あったが、後に大人の事情で再結成していたりもする。本当、何でも大人の事情だ。

バンドブームの盛り上がりと、その終焉、各バンドの台頭と、解散・活動休止劇が教えてくれたことは、何なのだろうか。これは、私たちに夢と希望を与えてくれた一方で、世の中は大人の事情で動いていること、ルールはすぐに変わってしまうということを教えてくれたのだ。

われらアラフォーが大学に入った頃から、日本の雇用・労働のルールはじわじわと変わってきている。メディアは「劇的」に変わったと報じるが、実際はじわじわと変わっているのである。とはいえ、象徴的な出来事、キーワードがあったことも事実だ。学生時代には「就職氷河期」と、会社に入ってからは「成果主義」など、人事制度が変わりつつある場面に遭遇した。

というわけで、20代、30代の、東洋経済オンラインを読んでいる意識の高いビジネスパーソン諸君。カラオケでバンドブーム時代の曲を歌うアラフォーは、うざい。それは肯定しよう。同世代が迷惑をかけてすまない。しかし、彼らもルールが変わる中、大人の事情で動いていることを理解してやってほしい。彼らも生き残るのに必死なのだ。カラオケで部下、後輩に迷惑をかけたところで、尾崎豊の「15の夜」ふうに言うなら、「自由になれた気がした」だけなのだから。彼らは、彼らなりに、変化する世の中を、生き残ろうとしている。それもまた、ロックだ。

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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