ピーチが「ANAの真逆」で成功を収められた本質 「他者がやらないこと」を大切にするワケ
そこで、「他者と違った印象を与える名前にする」という前提にしたというのだ。そして、そこに「アジアの人々にも共通して覚えやすい、聞くだけで幸せになるような名前」「肩の力を抜いた空の楽しみ方をしていただくのにふさわしい名前」といった希望を加えていった。
その結果、「他者と違う印象」で「覚えやすい」、そして「幸福感を伝える」社名として「ピーチ」に行き着いたというのである。たしかに「ピーチ」には、よくある「××航空」にはない強さとインパクトが備わっているのではないだろうか。
機内でクルマを販売!?
もう1つ、ピーチらしい取り組みの1つとして、井上氏は「飛行機のなかでクルマを買うことができる」という機内販売のサービスを紹介している。ピンク色に塗られたフォルクスワーゲンジャパンの「ザ・ビートル」を、なんと機内で販売したというのである。
かつて自動車業界で働いていたピーチの広報担当社員と、フォルクスワーゲンジャパンの社員が「おもろいことを仕掛けたい」と意気投合し、企画になったもの。当然ながらこれも、「ほかの会社、またはほかの人がまだやっていない企画」だったからこそ、やろうと決めたのだそうだ。
フォルクスワーゲンジャパン側にも、「『ザ・ビートル』にラインナップされることになったピンク色の車体で、より若い層や女性にアピールしたい」という思いがあった。ましてやピンク色の車体は、ピーチのテーマカラーに近い。つまり双方の思惑がリンクしたわけである。
もしも他社ですでに行っているようなサービスだったとしたら、前提が崩れてしまうことになる。だから、その際は見送っていただろうと井上氏は言う。しかし、「ほかの会社や人がやっていない」取り組みをすることによって興味を持ってもらおうと考えているピーチと、同じく新規性を追求しているフォルクスワーゲンジャパンの方向性が合致したからこそ、この企画は実現したのだ。
その結果、話題性のあるサービスとして、お客様はもちろんのことマスメディアにも高い関心を持ってもらえたのだという。
誰もが試せるアイデア
たしかに、そうするしか道はなかったのかもしれない。そして、これはピーチを成功させた、ピーチならではの発想だ。だが、必ずしもピーチだけにしかできないことではないとも言えるだろう。
企画のアイデアを、「ほかの会社やほかの人がまだやっていないこと」を前提として出してみるということは、誰にでも試せるわけだ。
だが残念なことに、誰かがやっているのを見て「おもしろい」と感じたら、なんの疑問も抱かないままそれをまねしてしまう人は少なくない。しかし、それでは創造的な発想など生まれるはずもない。
だからこそわれわれは、井上氏のこの言葉を心に刻んでおくべきなのかもしれない。
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