ピーチが「ANAの真逆」で成功を収められた本質 「他者がやらないこと」を大切にするワケ

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井上 慎一(いのうえ しんいち)/1982年3月、早稲田大学法学部卒業。三菱重工業株式会社勤務を経て、1990年9月、全日本空輸株式会社に入社。2011年2月、Peach Aviation株式会社の前身となる A&F Aviation株式会社に転じ2011年5月、Peach AviationのCEOに就任(撮影:ヒラオカスタジオ)

まず1つは、そこから「新しい価値」が生まれると考えているから。一般的な製品やサービスでは「早い×安い」が重視されるが、そこに「おもろい」が加わって「早い×安い×おもろい」となれば、それを使ってみたときの喜びや楽しみは格段に増すというわけだ。

もう1つは、人々がおもろさを求める姿勢は、雰囲気となってまわりの人に伝わるから。

「なんか、おもろそうなことやっているな」と感じるものがあれば、人の気持ちはそちらへと向かっていくもの。形のないサービスが中心となった航空会社の場合は、雰囲気をつくってお客様に感じていただくということはとても大切だというのだ。

だからこそ、「やってみたらおもろいんちゃう?」をベースに考えてみれば、そんな姿勢が会社全体の雰囲気になり、はては企業文化にまでなっていくわけである。

ANAが西に行くなら、ピーチは東へ

誰かがすでに考えていたようなアイデアのまねだったとしたら、なかなか「それいい!」という評価にはつながりにくいものだ。当然のことながら、人のやったことをまねただけでは、新しさを感じさせることができないからである。

そこでピーチでは企画のアイデア出しをする際、あえて「ほかの会社、あるいはほかの人がまだやっていない企画であること」を前提にするのだという。

そして新たなサービスに打って出ようという際には、「ANAがすでにやっているものはバツ!」「他社がやっているものも、バツ!」といった条件に基づいて決めていくのだそうだ。

会社のあり方から戦略までのすべてにおいて、「ANAと正反対を行く」という精神があるのだという。例えばANAがインパクトのある新戦略を打ち出し、ほかの航空会社もその戦略に追随したとしても、あえて「正反対のことをしよう」と考えるということ。

「ANAが西に行くなら、ピーチは東に行く」
これが、私たちの精神を象徴する言葉です。「ANAや競合他社がすでにやっていることは最初から考えなくていい。真逆でいこう」と、社員に公言しています。(23〜24ページより)

ちなみに「ピーチ」という社名も、「ほかの会社がやっていないことをやる」という考えに基づいて生み出したものなのだという。創業前、社内で挙がっていた社名候補は500種ほど。ところが、どれもどこかで聞いたことがあるようなものばかりで、しっくりこなかった。

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