優秀なのに「独り立ち」できない若手に欠ける物 「近頃の若者は」と愚痴っても仕方がない
仕事でも同じような「壁」があります。仕事の全体像を俯瞰(ふかん)的に捉えることができるかどうかは大きな壁であり、その壁を越えるには、インターネットで情報収集して上司の指示を聞いているだけでは難しい。一つひとつの作業を覚えるのとは別に、「全体像を把握する」意識を持つことが必要で、その力を伸ばしていかない限り「独り立ち」はできないのです。
では、部下に全体像をつかむ力を身に付けてもらうために、上司ができることとは何でしょうか。僕がおすすめするのは、「部下に話をさせる」ということです。
こう言うと「え? 部下からはいつも、報告を受けているし、たくさん話をしていますが?」と思われるかもしれません。でも、上司と部下との会話では、往々にして「上司の話に部下が同意する」という会話パターンを繰り返してしまいがちです。
例えば「新製品の売上予測」について上司と部下が話すと、大体こんなやり取りになるのではないでしょうか。
部下:「ええと、○○個ですね」
上司:「そうか。今回は発売1ヵ月で○○個だから、前回の20%増ぐらいは目指せそうだな!」
部下:「そうですね。頑張って売っていきましょう!」
こういう会話をしていると、上司としては、部下が自分と同じくらい状況を把握し、判断しているように思い込んでしまいます。でも、現実には上司の言葉にただ「反応」しているだけであって、自分で考え、判断することはできていない可能性がある。
つまり、「イエス・ノーで答えられるクローズド・クエスチョン」だけでは、部下がどれくらい、仕事の全体像を捉えて話をしているのかがわからないのです。
部下を「独り立ち」させるコツ
部下に声をかけるときは、なるべく「イエス・ノーで答えられるクローズド・クエスチョン」ではなく、「次の新製品は、どれくらい売れるだろう?」「次はどんな商品をつくるべきだろう?」といったオープン・クエスチョンを投げかけてみる。
そうやって、部下にイチから「話」をさせてみると、部下が本当に仕事の全体像を把握しているのか、上司の言葉に反応しているだけなのかが見えてきます。
このとき、注意してほしいのは、「上司と部下の意見を一致させる」ことに力点を置かないということです。必要なのは、上司に同調するイエスマンではありません。部下の一人ひとりが仕事の全体像を把握したうえで、自分で考え、判断したことを筋道だって話ができているかどうかが大切です。