優秀なのに「独り立ち」できない若手に欠ける物 「近頃の若者は」と愚痴っても仕方がない
この背景にあるのは、月並みですが、やはりインターネットの普及による、情報環境の激変があると思います。
今は、仕事に必要な一つひとつの情報であれば、スマートフォンさえあればすぐに手に入れられる時代です。上司からの指示や、仕事に必要なさまざまな情報も、メールの履歴や社内のデータベースを検索すれば知ることができる。こうした情報環境をうまく活用している若者たちは、一昔前だと考えられないくらいのスピードと的確さで与えられた仕事をこなせるようになっているのだと思います。
もちろん、このこと自体は、悪いことではありません。以前よりも早く仕事が覚えられるようになったわけですから。
ただ、注意をしなければいけないのは、これはあくまで「一つひとつの作業を、上司の指示に従って的確にこなす」ということについて言えることであって、「仕事の全体像を把握して、自分でマネジメントする能力」を身に付けるには、やはり以前と同じぐらい、時間と経験が必要だということです。
指示をされたことは的確にこなすし、ミスも少ない。当然、上司から見ると十分に仕事を覚えたように見える。ところが部下のほうは、個別の作業を何とかこなしているだけで、実は仕事の全体像をまだ把握してはいません。
上司は「これだけ一つひとつの仕事を完璧にこなしているのだから、もう任せても大丈夫だろう」と判断して仕事をどんどん回し、よかれと思って「そろそろ、一人でやってみるか?」と仕事を任せようとする。その結果、問題が起きる。
部下は「自分はまだ半人前なのに、次から次へと仕事を振られたうえに、放ったらかしにされた」と感じてしまうし、上司は上司で「せっかく信頼して仕事を任せたのに、どうしてこんなことに」と失望する……。
これは、やや図式化していますが、おそらく今のビジネスの現場で起きている、少なくない現実ではないかと思うのです。
一人前になるためには
もちろん、仕事というのは、一つひとつの作業をマニュアル的にこなす、という段階も大事です。誰でもその段階を通らないと、一人前になることはできません。ただ、マニュアル的に仕事をこなしているだけでは、いつまで経っても仕事の全体像を把握することはできないし、全体を任されて、マネジメントする、という段階まで成長することができません。
小学生ぐらいの子を持つ親が、学校でのテストの結果を見て、愕然とすることがあります。
低学年でひらがなや数字を覚え、簡単な計算問題を解いているうちはとくに問題なかったのに、小学校の4年生、5年生ぐらいになると、応用問題が何を自分に求めているのかをつかめないせいで、にっちもさっちもいかなくなる段階がくる。