今が"鍋底"?吉野家は成長軌道に戻れるか あのヒット商品は業績予想に織り込まれていなかった

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さらに、12月に入って投入した「牛すき鍋膳」(並盛580円、大盛680円)という鍋仕立ての新商品が好スタートを切った。「12月半ばには夕方以降、東京都心の吉野家を訪れた客の5割が牛すき鍋膳を注文していた。販売目標などは公表していないが、手応えを感じている」(前出の広報・IR担当者)。

牛すき鍋膳の効果は数字にも表れている。発売当月の12月の既存店売上高は前年同月比116.0%と、牛丼並盛を値下げした4月に匹敵する伸びを記録した。

注目すべきは、現在公表している会社の業績見通しに牛すき鍋膳の効果は織り込まれていないという点。「昨年10月の下方修正の発表時点で、12月に牛すき鍋膳を投入できるかは未確定だった。今の基調が続けば、現在の会社見通しは十分に達成できる」(同)。

目玉商品の継続投入がカギ

とはいえ、来年度に向けては課題も残る。4月は消費増税を控えているうえ、前年の値下げ効果が始まった月でもあり、既存店売上高をどこまで維持できるか。現在の消費者は飽きが早く、短いサイクルで商品を出し続けなければ、客足が遠のいてしまう。牛すき鍋膳のような、目玉商品を継続的に投入できるかが今後のカギとなりそうだ。

今第3四半期を“鍋底”として、反転攻勢に転じようとする吉野家。戻り始めた客をどこまでつなぎとめることができるか。牛すき鍋膳に続く次の一手が、2014年度の行く末を左右しそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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