今が"鍋底"?吉野家は成長軌道に戻れるか あのヒット商品は業績予想に織り込まれていなかった
さらに、吉野家HDは100株の保有者に対し、3000円分のサービス券を株主優待として配布している。優待の発送時期は例年5月と11月。毎回20万人以上いる株主のうち95%が優待を利用することから、割引に伴う引当金や優待の配送料などが第3四半期に集中する。
加えて、昨年12月から販売を開始した「牛すき鍋膳」の先行投資も重荷となった。牛すき鍋膳で使用する鍋はすべて特注で作ったもので、全国1200店分(一部店舗のぞく)の鍋を昨年9月に発注したことで費用が発生した。
このようなマイナス要因によって、第3四半期の3カ月間だけを抜き出すと、3.5億円の営業赤字となった。だが、会社側が想定していたほど業績は悪化しなかった。その背景には何があったのか。
新商品が相次ぎヒット
大きな役割を果たしたのが、昨年10月に投入した牛丼「アタマの大盛」(380円)や「コモサラセット」(330~360円)という、牛丼の量を変化させた既存メニューの派生商品だ。ご飯は並盛で具だけ大盛にしたアタマの大盛は、若いサラリーマンを中心に販売を伸ばした。小盛牛丼とサラダをセットにしたコモサラセットは当初、女性をターゲットに開発されたが、少食のシニア層などからも受け入れられた。
昨年4月に牛丼並盛を値下げした効果で、月次の既存店売上高はしばらく前年超えが続いてきたが、夏以降は値下げ効果が薄れ始め、9月には98.3%と前年割れの水準まで落ち込んだ。しかし、新商品を次々と打ち出したことで、10月に102.2%、11月に101.5%と、再び前年を超える水準まで持ち直してきた。
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