「EU離脱」とラグビーでアイルランドに注目の訳 W杯で日本はアイルランド統一チームと戦う

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学校時代からの活発な交流が選手間の心理的な壁を取り払った。アイルランド代表のキャプテンとしてチームを引っ張る闘将、ローリー・ベスト選手も北アイルランド出身だ。「若い人たちには南北間だけでなく、イギリスに対するわだかまりもほとんどない」。

「(両地域に残る感情などを)オブラートに包む形で共存してきたのに、物理的な壁が再び構築されて“色分け”がなされてしまうと、紛争時の対立構造へ逆戻りしてしまうのではないか」。海老島氏はこう心配する。

アイルランドは低迷期を乗り越え成長してきたチーム

海老島氏が地元のクラブチームでプレーしていた1990年代前半は、アイルランドラグビーが「どん底状態」だった時期と重なる。攻撃はいわゆる「アップアンドアンダー」が主体。タックルが強力で大崩れはしなかったが、なかなか勝てない時代が続いた。

今は世界ランク3位の強豪であるアイルランド代表は低迷期を乗り越えて強くなってきたチームだ(写真:ラグビーワールドカップ2019組織委員会提供)

その後、ニュージーランドや豪州の「展開ラグビー」を吸収しようと、コーチを招聘するなどした強化策が徐々に実を結ぶ。躍進を遂げた現チームを率いるジョー・シュミット・ヘッドコーチもニュージーランダーだ。

「アイルランドでは学校のスポーツがとても重要。学校で最低2種目のスポーツに取り組む文化がある。クラブチームも“補欠”という概念がなく、試合には全員が出場して友達作りもする」

ラグビーの楽しみ方をアイルランドで知った海老島氏。「今年のシックス・ネーションズ(6カ国対抗)では3位に終わったが、ワールドカップ本戦ではそこから修正して決勝まで進むのを期待したい」。言葉の端々に“アイルランド愛”がにじみ出る。

決勝戦が行われるのは11月2日。「ブレグジット」の最終期限の2日後となる。もし、アイルランド代表が優勝トロフィー「ウェブ・エリス・カップ」をかけた大舞台に立ったとき、彼らはどのような思いで「アイルランズ・コール」を口にするのだろうか。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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