「EU離脱」とラグビーでアイルランドに注目の訳 W杯で日本はアイルランド統一チームと戦う

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アイルランドが注目されているのはラグビーの世界だけではない。

欧州連合(EU)からの離脱、いわゆる「ブレグジット」に揺れるイギリス。7月22日(現地時間)にテリーザ・メイ氏に代わる新たな与党・保守党党首にボリス・ジョンソン氏が選ばれ、7月24日にジョンソン新首相が誕生している。「10月31日に必ずEUを離脱する」と離脱強硬派の同氏だが、10月末の離脱期限を前に「合意なき離脱」への懸念は高まるばかりだ。

最大の障害となったのが北アイルランドの問題である。離脱に伴い、EU加盟国で英国と唯一地続きの南側にあるアイルランドとの間に物理的な国境(ハード・ボーダー)が復活するのを避けようという「バックストップ」と呼ばれる安全条項の内容をめぐって与党内の意見の隔たりが大きく、英国の迷走を招いた。

メイ前首相がEUとの間で合意した当初の案は、離脱後も英国全体を関税同盟の枠組みに残すというもの。これに保守党内の強硬派がかみついた。「これでは英国が永久に離脱できない」。党内調整が難航し、議会では合意案が否決。メイ氏の求心力低下につながった。

EU離脱がアイルランドに与える影響も小さくない

2016年の国民投票ではEU離脱派としてアピールし、2018年にはEUとの関係を重視するメイ前首相に反対して外相を辞任したジョンソン氏。上記のバックストップ条項についても拒否のスタンスを示している。かといって、ジョンソン首相にはEU首脳との再交渉に臨むための代替案を用意しているようにもみえない。「ハード・ブレグジット」を余儀なくされたら、それはEU側の責任、というのが同首相の考えだ。

金融市場の関係者なども強く警戒する「合意なき離脱」。それが現実のものとなり、南北間のスムーズな人やモノの移動が急に難しくなったら市民生活の混乱は避けられそうにない。

ラグビーの統一チームを支えているのも、実は南北双方に「エリートのスポーツ」という共通認識があるからだけではない。「両地域が高校チームのレベルからお互いに行き来してきたことによる面も大きい」と海老島氏は語る。

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