トランプに学ぶ「意識低い系」マーケティング 挑戦的な言葉遣いは「あえて」やっている?

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ちょうどその頃、ヒトラーは政治家を目指し始めた。獄中で執筆した『わが闘争』が出版されたのは、1925年のことだ。『独裁者』公開の20年前には、すでにヒトラーはチャップリンのようなちょび髭をはやしていたのだ。

さらに、7:3に分けた髪型は、当時のドイツでもカッコイイものではなかった。ナチスの制服などが洗練されたデザインだったことに比べて違和感がある。背格好や顔がチャップリンに似ていたヒトラーは、あえてチャップリンのようなコミカルさを演出し、警戒感を薄めることで支持を集めたというのだ。

ちなみに、『独裁者』の後、ヒトラーに似ているのが嫌になったのだろう。チャップリンはトレードマークだったちょび髭をやめて、別の形の付けひげをするようになった。

トランプも決して美男子ではない。髪型もヘンでみんなからバカにされている。北朝鮮の金正恩の髪型もヘンだ。だが、一種のマヌケさが人を魅了することがあるのもまた事実だ。トップはスタイリッシュすぎてはならないのかもしれない。

意識の高低のダイナミックレンジ

ユーザーの感情や欲望に刺さる「意識の低さ」を重視する意識低い系マーケティングだが、先進性や高い理想など「意識の高さ」を否定するものではない。むしろ、その両方を備えることが必要だ。

意識が高いだけでは売れないし、意識が低いだけの商品には新しさがない。作り手の視点を優先させる「プロダクトアウト」と、ユーザーニーズを優先させた「ユーザーイン」の、どちらか一方に偏りすぎてもよくないように。

人間も、本当に意識が低いだけでは何もできない。トランプ自身、戦略的に「バカだ」と言われるような人物を演じている。大統領としては、政府のシステムががっちりと意識の高い部分を担っているからこそ、職務を遂行できているのだろう。日本の国会議員や大臣も似たような側面はないだろうか。

意識の高さと、低さの両方が強ければ、人は魅力的に見える。

「知識を身につけると、何をしてもおもしろく感じられるし、おもしろみのある人間にもなれる。年齢や業績は関係ない。今すぐ学び始め、そして学び続けることだ。そうすれば、最先端の感覚を身につけられる。それが成功や、新しい興味を見つけるのに役立つのだ」

「歴史上もっとも醜い出来事は、人々が自分の頭で考えるのをやめ、間違った指導者に従ったことから起きている。独裁や大虐殺など、暴力的で非人間的な行為はそのようなときに生まれるのだ」

誰が発した言葉か? もちろん、ドナルド・トランプである(きこ書房『トランプ最強の人生戦略』より)。

小口 覺 ライター、コラムニスト
おぐち さとる / Satoru Oguchi

1969年兵庫県生まれ。明治大学法学部卒業。ITや家電を中心に各業界のモノとビジネスのあり方をウォッチ、『DIME』『日経トレンディネット』などの雑誌やウェブメディアで活躍する。

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