トランプに学ぶ「意識低い系」マーケティング

挑戦的な言葉遣いは「あえて」やっている?

「悪役」への嫌悪は、時間が経つと好きに変わる。ファンが増えるのだ。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の悪役ビフ・タネンは、トランプがモデルだが、彼を演じたコメディアン、トーマス・ウィルソンはその後人気俳優・声優として活躍した。

日本ではかつて、ホリエモン(堀江貴文氏)がマスコミから集中砲火を受けたが、彼もまた悪名を揺るぎない知名度へ変え、批判に対して最もタフな人物となっている。

彼らの発言の場として使われるのがツイッターだ。アメリカにおいてツイッターは、インスタグラムやフェイスブックに比べると利用者数が少なく、マイナーなSNSである。

ツイッターはテキスト中心で匿名性や拡散性が高いことで、インスタグラムやフェイスブックよりも議論(ケンカ)が盛り上がりやすい。トランプがツイッターを使うのは、ケンカに適したSNSだからだろう。場が荒れるほど人々の関心を引き、自分が有利になるからだ。

まさに、ツイッターはトランプにとってプロレスのリングであり、そこで求められるのはパフォーマンスであり、わかりやすいフレーズだ。プロレスなので、「おまえ、かかってこいよ!」がウケるのである。いくらトランプとて、もうちょっと賢そうな物言いもできないはずはない。

トランプをバカにする人たちは見落としがちだが、MBAのランキングとしてはアメリカのみならず世界トップクラスの名門ペンシルベニア大学ウォートン校を卒業しているのである。

人格に問題があるのかもしれないが、言葉遣いは、「あえて」やっている可能性が高い。なので、用いられる単語のレベルが低い、文法が間違っているとの批判は意味がない。海外映画の字幕が、正確性よりもわかりやすさが優先されることがあるのにも似ている。

素朴な欲望は嫌悪を持たれない

トランプは欲望を肯定する。大きいことや強いことはいいことで、そこに疑問を持たない。若い美人と付き合うし、ビジネスのためなら人も裏切る。一言で言うなら、下品な金持ちである。あそこまで欲望をあらわにしながら選挙で国のトップに上りつめた人間は、21世紀の先進国ではほかに例を見ないだろう。

どんな人間にも欲望はあるものの、それをあからさまにするのは、嫌悪や嘲笑の対象となる。しかし一方で、共感を得るのにも役立つ。そのわかりやすさゆえに、意識の低い多くの人からは好感を持たれる。一方、意識の高い理念は、共感を得られにくい。エリートやインテリが選挙に弱いのはこの点にある。

例えば少年マンガでは、主人公がいきなり「世界を平和にする」「差別をなくす」といった高い理想を掲げることはない。万人にあるような、「強くなりてえ」「モテたい」といった欲によって行動する。そして、精神的に成長することで、次第に「周囲の人間を守りたい」「社会に役立ちたい」と意識が高くなっていくのが王道のパターンだ。

歴史上の人物を題材にした小説が、たいていは少年時代から描かれるのも、素朴な欲望を見せることで、物語に読者を引き込むためだろう。

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