トランプに学ぶ「意識低い系」マーケティング 挑戦的な言葉遣いは「あえて」やっている?

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

政治など公共性の高い仕事は、意識の高い人に任せたいと思うのは当然だ。しかし、人間には感情や欲望があり、多くに支持される必要がある民主主義は、意識が高いだけでは成立しない。与野党問わず、有権者に何かしらの利益を与えたり、さまざまな危機や恐怖をあおったり(という言い方がまずければ、世に問いながら)したほうが、支持が集まりやすいからだ。

マーケティングも同様だ。製品やサービスも、開発者の高い理想だけでは売れることはない。人々の「ラクしたい」「得したい」「人に自慢できる」といった、比較的低い意識に関係することで広く受け入れられる。製品ライフサイクルでいう成長期やキャズムを越えるには、意識の低い層であるマジョリティーに気に入ってもらう必要があるのだ。

“フェイクニュース”でトランプ・タワーを売る

例えば、「有名人に弱い」のは1つの意識の低さだ。ミーハーという言葉もある。自分を意識高いと思っている、そう思わせたいなら、街で有名人を見かけても大騒ぎしてはいけない。実際“トランプ大統領”に会ったら、握手や写真撮影を求める人は少なくないだろう。誰にでも意識の低い部分はあるはずだ。

1983年、“不動産王”トランプは、「トランプ・タワー」の部屋を売り出した際、「イギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃が購入を検討している」という噂を流した。イギリス王室は、それを否定も肯定もしなかったが、結果、海外の富豪やマイケル・ジャクソンやスティーブン・スピルバーグなどのセレブが購入することとなった。フェイクニュースが功を奏したのだ。

マンションの「格」は、立地や建物そのものだけでなく、そこに住む人によって決まる。かつて筆者の実家の近所に、キムタク(木村拓哉)や若乃花(現・花田虎上)が住んでいたマンションがあった。

自分の目や住民票で確認したわけではないので、「住んでいたとされる」だが。データはないものの、有名企業の経営者や有名人が住むことで、物件の相場は高めに維持されるのではないか。ほかにもキムタクが買ったと噂されるマンションは日本中にあるようだが、もしかするとマンションの営業マンが流した噂かもしれない。

冷静に考えれば、有名人が住んでいることと、マンションの価値とは直接は無関係だが、人は御用達に弱い。事実、有名人が身に着けた腕時計やアクセサリーはブームになりやすい。トランプは有名人の知名度を活用。それだけでなく、ビジネスのために、自分自身が有名になることを選んだ。

単なる目立ちたがり屋だとしても、趣味と実益を兼ねている。ジャパネットたかたしかり、アパホテルしかり、社長が広告塔として成功することのメリットは大きい。有名人に広告に出てもらうには大きなお金がかかるが、社長ならタダだし、創業者=その会社なので、ブランディングとしても間違ってはいない。

次ページ自らの名前を冠した事業をいくつも立ち上げてきた
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事