コンビニよりも葬儀場?これが日本の多死社会 お葬式こそ、実は長期安定の投資物件だ

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家族葬専用会館の基本フォーマットは建物面積60坪程度。設備投資金額は従来型の1.5億~2億円に対して、約7000万円。さらに居抜き物件を使えば、状況にもよるが4000万円程度に抑えられるという。「工期も約1.5カ月と短くて済むので、開業までの期間も短縮できる」(中村氏)。

小規模でも葬儀内容は変わらない

家族葬専用会館は現在8会館で、コンビニ転換型は2会館。2018年11月にオープンした名古屋市名東区の「ティア猪高」は、地価の高い住宅地に隣接する商業エリアに位置している。建物面積は約60坪。葬儀を執り行うホールや遺体安置室など必要な設備は完備し、すべての宗教・宗派に対応できるよう備品も充実させた。「規模こそ小さいが、葬儀の内容自体は従来の会館と変わらない質を提供している」(中村氏)。

コンビニ居抜き物件の「ティア猪高」では、小型祭壇を並べることで天井の低さをカバーしている(記者撮影)

従来の会館と建物の構造的に異なるのは天井。コンビニ居抜き物件は天井が低いので、背の高い大きな祭壇が入らない。そこでキューブ型の小型祭壇を用意し、それを横に複数並べる形で、祭壇の大きさを調整することにした。また、天井に設置した空調の風が祭壇に直接当たらないように調整している。

既存会館とのバッティングが気になるところだが「家族葬専用会館にご相談に来られた方のご要望を伺う中で、より規模の大きい葬儀ができる既存会館をご紹介することもある」(中村氏)。ティアとしては、むしろドミナント展開の加速によるシナジー効果に期待している。

葬儀の小型化への対応が迫られる葬儀業界と、経営環境の悪化に苦しむコンビニ業界。一見かけ離れた業界の接点から、新たなビジネスチャンスが生まれている。

三上 直行 東洋経済 記者

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みかみ なおゆき / Naoyuki Mikami

1989年東洋経済新報社入社。これまで電機などを担当。現在は、冠婚葬祭業界を担当。

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