「机上の空論で製品作る」ある車メーカーの失敗

現場を見なければ正しい価値を生み出せない

マーケットリサーチは、時に実態とかけ離れていることがあります。ある高級車メーカーのCMと高級車に乗っているオーナーとの乖離とは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)  
テクノロジー万能とされる時代に警鐘を鳴らし、人文科学の有用性を著書『センスメイキング』にて明らかにしたクリスチャン・マスビアウ氏。2019年5月29日に立教大学にて行われた「AI時代におけるAIと人文科学の可能性」と題した同氏による講演では、マーケットリサーチにおける“観察”の有用性について語られた。どういうことなのか――。

3つのポイント

製品やサービスの開発、あるいは広告の戦略を立てる際に、一般的に行われるのがマーケットリサーチです。しかし、リサーチの方法によっては誤った認識を持ってしまう危険性があります。

私が創業したコンサルティングファーム「ReDアソシエ―ツ」では、人文科学の知見に基づく「センスメイキング」を基盤としてリサーチを行っていますので、まずはセンスメイキングの3つのポイントをご紹介したいと思います。

1つ目。私たちは人についてリサーチを行うとき、周囲から切り離した個人として見ることはありません。人間は誰しも、周囲の人間関係や社会環境、文化といったものから影響を受けていますから、1人だけを取り出して観察しても、人間の行動や心理を正しく読み取れないからです。あくまでも周囲の関係性を含む文脈の中で捉えなくてはなりません。

次のポイントは、「人は必ずしも自分自身のことを正確に答えられない」ということ。マーケットリサーチでは一般的にアンケートが行われ、「あなたは何がほしいですか?」「いくら支払いますか?」といった質問がされます。これは、「彼らは答えを持っている」という前提のもとで行われていることですが、私たちはそうした前提を置いていません。

人文科学の世界には「人間は自分自身のことを知らない」という前提があります。これをマーケットリサーチに当てはめると、顧客は自分が何をほしいのかわかっていないし、未来の自分のことなど、さらに答えることが難しいということがわかります。もちろん、アンケートがまったく無意味と言いたいわけではありませんが、一方でこうした見方も必要になるというのが私の考えです。

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