「机上の空論で製品作る」ある車メーカーの失敗 現場を見なければ正しい価値を生み出せない

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3点目。マーケットリサーチは、「相手が自分の行動を正確に報告してくれる」という期待のもと行われているわけですが、私たちはこの点に疑いを持っています。例えば、「家でどのような食事をしていますか?」と質問をすれば、「いつも家族で食卓を囲んでオーガニックを食べています」といった答えが返ってくることがありますが、実際に食卓を見せてもらうとほとんどが冷凍食品ということもあるのです。

この場合、質問に答えた人々は、うそを言っている意識がないということが往々にしてあります。そもそも人間は、言っていることと行動が矛盾するものだからです。だからこそ、私たちは真実を知るためにはインタビューだけではなく、観察をすることも重要と考えています。

「大自然を疾走する高級車」は人々に刺さらない

いくつか具体的な事例を挙げたいと思います。

「車と人」というテーマは、私たちが長い年月をかけて研究してきたテーマの1つです。人々は何のために車を使うのか。どういう設計をすればいいのか。そういったことを、私たちは考え続けてきました。

以前、トラックのメーカーから依頼を受け、製品開発やマーケティングなどに関する意思決定のお手伝いをしたことがあります。そこで調べてみると、トラックの各メーカーは、こぞってさまざまな機能を考え、導入していたわけですが、必ずしもドライバーのニーズを満たしていないという実情がありました。

そこで、私たちが行ったのが実際にトラックを使うドライバーの観察でした。トラックに一緒に乗り込み、ドライバーが何をしているのかを知ることが目的です。トラックのドライバーは、ただ道路を走っているわけではありません。トラックやトレーラーの荷物の点検をする、位置決めをしてトレーラーをトラックに接続する、安全チェーンを設置する――。こうしたことを日々行っているのです。

また、トラックと一口に言っても、狩猟や現場作業など、さまざまな使い方があることを知ることもできました。このように、数日だけでも観察を行うと、ユーザーのことをより深く理解することができ、よりよい製品開発のヒントを得ることができます。

このようなリサーチは数日もあればできるものですが、多くのメーカーでは現場を見ることなく、エンジニアが机上で最新機能を開発しています。これでは、本当にユーザーに喜ばれるトラックを作ることは難しいでしょう。

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