「机上の空論で製品作る」ある車メーカーの失敗

現場を見なければ正しい価値を生み出せない

次に、ある高級車メーカーの事例をお話ししましょう。この高級車の広告には、自然の中の道路を1台だけで疾走している場面の写真が使われていました。時速80マイルほどで爽快にドライブしているといった雰囲気です。しかし、この広告は本当に人々の心に届いているのでしょうか?

そのことを調べるために、私たちは上海やチェンナイといった世界の都市に出向きました。そして、高級車のオーナーが実際に運転する場面を見せてもらうとともに、オーナーにお願いして、その日に起きたことや気分を記録してもらったのです。この結果、広告の写真とはまったく違う生活の実態が明らかになりました。

スピードの出る高級車に乗っていても、普段は街中で運転されていますから、日頃出せるスピードはせいぜい時速20マイル。広告の写真のように大自然を見ながら時速80マイルでドライブすることなどできません。

さらなる発見として、高級車のオーナーの多くは運転手がいるため、運転席ではなく後部座席に座っているという事実もわかりました。自動車の開発は、運転席の周辺に工夫が凝らされているものですが、後部座席にも工夫の余地があるのかもしれませんね。

マーケットリサーチにセンスメイキングを取り入れ、非常に深いインスピレーションを得ることができれば、このように、新たな製品やサービスを考えるきっかけをつかむことができるのです。

お金の“意味”を理解せよ

次はお金に関する事例を紹介しましょう。ビジネスやサービスを考える際、お金は重要なファクターになりますが、お金の意味そのものを考える機会は少ないのではないでしょうか。以前、大きな銀行から依頼を受け、「お金とは何か」ということを調査しました。

お金の意味は、経済学者や会計士にとっては同じものかもしれませんが、個人にとってはそうではありません。例えば、両親が子どものために貯金をするお金と、スーパーで買い物をするときのお金は、まったく違う意味を持っています。

つまり、人間にとってお金の意味はさまざまであり、時には混乱を起こすこともあるということです。私たちが人々の生活を観察したところ、とりわけ今の子どもたちがお金に関して混乱をしていることがわかってきました。

次ページ複雑化する「お金の意味」
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