「机上の空論で製品作る」ある車メーカーの失敗 現場を見なければ正しい価値を生み出せない
数十年前までは、子どもにとってのお金とは、空き瓶や貯金箱に貯める小銭を意味していました。このお金を貯めて、例えばCDアルバムなどを手に入れていたわけです。ところが今は違います。ストリーミング配信されている楽曲を聞くには、小銭で買うことはできません。
しかも、今はインターネット上に無料のサービスがあふれていますし、その一方でゲームの中だけで使える通貨も存在します。そうした現実にさらされる今、お金の意味はますます複雑化し、混乱を引き起こしているというわけです。
私たちは、子どもの親御さんに、「子どもに貯金について教えていますか?」「節約について教えていますか?」などと聞くこともあるのですが、多くの場合、「教えています」という答えが返ってきます。でも、小銭の使い方は教えているかもしれませんが、デジタルのお金のことは見落とされているのではないでしょうか。
ノーベル賞受賞者でも「年金はさっぱり」
お金を扱うサービスを提供するのであれば、お金と顧客の関わり方を理解しておきたいところです。過去に、依頼を受けたある銀行の事例をお話ししましょう。
この銀行は年金サービスを取り扱っていたのですが、年金の受給者との関わり方に課題を抱えていました。そこで、私たちは実際に年金を受け取っている人々に話を聞くことにしました。
その中の1人に、ノーベル賞を受賞した男性がいたのですが、彼の言葉は非常に印象的でした。「僕は核や原子物理学は得意だが、年金の通知はさっぱりわからないんだ」と答えたのです。彼ほど優秀で知的な人物でも解読できないわけですから、今一度年金の仕組みや通知のあり方を考え直したほうがいいのかもしれません。
人々のことを実体のあるものとして知るためには、観察によるセンスメイキングを取り入れることが大切です。人文科学を好み学んだ人であれば、こうした観察は得意でしょう。だからこそ私は、人文科学を学んだ人が多い社会のほうが倫理的で、しかも実際的だと考えているのです。
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