「打算的な人」ほど人から信頼を得られない理由 長続きする友情は自己開示から始まる

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「自分から心を開く」といっても、仕事の打ち合わせで唐突に打ち明け話をしても、かえって空気がおかしくなってしまいます。まず、相手と「呼吸を合わせる」ことが必要です。互いに緊張しているときというのは、話していても息が浅く、話のタイミングもなかなか合いません。

でも、一度深呼吸して、自分自身の呼吸を落ち着かせ、10分、20分と話してみる。そうすると(相性がそう悪くなければ)、互いの呼吸のタイミングが合い、会話にリズムが出てきます。そうなれば、おのずと「あ、今なら少し、個人的な話をしても大丈夫かな」というタイミングが訪れてきます。

僕は仕事の打ち合わせが1時間あるとしたら、15分、多い時は30分くらいは雑談をしています。非生産的に思えるかもしれませんが、経験上それくらい楽な気持ちで関係のない雑談をしたほうが、結果的にはいい仕事につながることが多いのです。

というのも、「どうでもいい話をしたくなる」のは、相手と呼吸が合っている証拠だからです。最初はなんとなくお互い背もたれにもたれるように、ちょっと距離をとって話していたのが、だんだんと前のめりになり、手や頭がテーブルの上に覆いかぶさるぐらいに互いの距離が(文字どおり)近づいてくる。それくらい相手と呼吸が合ってきてはじめて、相手との心理的距離も縮まってきます。

話にオチをつけない

雑談が上手な人は、相手との心理的距離感を測るのが上手です。そういう意味では、「雑談力」こそが相手との距離を縮めていくときに身に付けておくべき、大切なスキルだということが言えるでしょう。

では、雑談力をつけていくにはどうしたらいいか。雑談が苦手だという人に僕がよくアドバイスをするのは、「話に<オチ>をつけようとしない」ということです。

テレビの世界では長年、お笑い番組が王者に君臨し続けています。新しいメディアである「YouTube」などでも、「笑い」というのは非常に大切な要素になっていて、話には面白い「オチ」があることが当たり前になっています。

でも、少なくともビジネスの雑談には、「オチ」とか「結論」はいりません。むしろ、話に「オチ」がないほうが相手の話を広げていくこともできるし、相手との距離感を縮めていくのには好都合なことも少なくありません。

もう1つ、ビジネスの雑談で大切なことは、「自慢話ではなく、失敗談を語る」ということです。これも、「オチがいらない」のと理由は似ています。つまり、自分の話だけで自己完結するのではなく、相手が「それは大変でしたね」「ちょっとやばいじゃないですか」と突っ込みやすい話をするほうが、相手との距離を縮めることにつながります。

また、「自分から笑う」というのも、相手との距離を縮める有効な方法の1つだと思います。明石家さんまさんがほかの芸人さんとまったく違うところの1つに、「自分の話に、自分で大笑いする」ということがあります。

これは本来、プロのお笑いとしては「禁忌」であって、明石家さんまさんのような天才だからできる名人芸なのですが、実はお笑い芸人ではない一般人にとっては、むしろ取り入れやすい「方法」だと僕は思います。

私たちは、目の前の人が笑っていると安心します。少なくとも、こちらを攻撃する意思がないということが確認できるし、自然と距離も縮まってきます。

話のオチを気にしない、失敗談を語る、自分の話に自分で笑う。ひとまずこの3つを自分なりに取り入れながら、雑談をしていく。これが、相手との距離を縮めていく1歩目になるのではないかと思います。

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アルファポリスビジネス編集部

アルファポリスはエンターテインメントコンテンツのポータルサイト。小説、漫画、書籍情報などを無料で配信。最近はビジネス系の記事にも力を入れている。

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