香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由

国際金融センターで何が起きているのか

これを中国企業から見れば、2018年の中国企業のエクイティ・ファイナンス調達額のうち42%、IPOに限れば55%が香港市場で調達していると報道されている。香港は、まさに中国本土に世界マネーを供給してきた貴重な金融市場と言える。

一方で、香港はまた中国のマネーが逃げていく場としても注目されるようになっている。香港の不動産投資や事業への投資という形で、中国マネーが香港を通じて世界に流出する現象だ。

最近になって仮想通貨のビットコインが急騰して話題になっているが、ビットコインを通じて中国マネーが本土から流失しているという報道もある。中国ではビットコインの売買は禁止されているのだが、「OTC (店頭)市場」での信用取引は黙認されているとも言われ、その利益が香港などで事業資金に転換される。

インデックス投信に組み入れられる香港株

中国が香港を通じてかき集めているマネーは莫大な額にのぼる。香港市場で組成されるファンドの多くは、中国企業が組み入れられ、それを購入する欧米や日本の銀行や投資家は、いつのまにか中国に多額のお金を投資していることになる。

こうした現実に対して、ルビオ上院議員なども世界の株価指数に連動する投資信託などの情報開示が不十分だと指摘。実際に、日本の証券会社や銀行などが販売しているインデックス型の投信などの中には、香港を通して中国の企業に投資しているケースが多い。

とりわけ、グローバルなフィンテック関連企業などは、2018年に急速に伸びており、アクセンチュアの調査によると、フィンテックベンチャー企業への投資額は、世界全体で2017年の2倍を超える553億ドルに達し、とりわけ中国への投資額は9倍に跳ね上がっている。

2018年のフィンテック投資総額の46%を中国が占めており、いかに中国が世界からマネーを集めているかがわかる。もちろん、直接中国に入るマネーも多いが、香港を通して流入する投資額も巨大なものだ。

アメリカが中国に対して仕掛けている貿易戦争も、考えてみればすでに遅きに失しているのかもしれない。それだけ、中国は世界のマネーを集めてしまったと言わざるをえない。

問題はこれで香港に何かが起きたときに、どんな影響が出るかだ。今回の立法会への突入が象徴するように、先進国であのような暴動が起これば、警察が取り締まりを強化することは間違いない。ああした暴動は、香港政府や中国政府に動くきっかけや大義を与えてしまうため、香港の金融業界ではデモそのものを懸念していると言われる。

ひょっとすると、2047年まで約束されている「1国2制度」を繰り上げて、香港の自治権を中国政府が奪うような事態になるかもしれない。香港はイギリスから返還されるときに、当時中国のトップだった鄧小平とマーガレット・サッチャー英首相が50年間の「1国2制度」に合意したわけだが、中国が自治の回復を名目に香港から「高度な自治」を奪ってしまうかもしれない。

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