香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由 国際金融センターで何が起きているのか

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一方、アメリカのシンクタンクであるヘリテージ財団とウォールストリート・ジャーナルが算出している「経済自由度指数(INDEX of Economic Freedom)」を見ると、香港は25年連続でトップを維持している。しかしながら、シンガポールに肉薄されており、いつそのトップの座を奪われても不思議ではないような状態だ。トップ10は、次のようになっている(2019年版)。

① 香港(90.2点)
➁ シンガポール(89.4点)
③ ニュージーランド(84.4点)
④ スイス(81.9点)
⑤ オーストラリア(80.9点)
⑥ アイルランド(80.5点)
⑦ イギリス(78.9点)
⑧ カナダ(77.7点)
⑨ アラブ首長国連邦(77.6点)
⑩ 台湾(77.3点)

ちなみに、日本は30位となっている。

経済自由度指数の採点では、財政の健全性や汚職の多寡、政府支出の大小、ビジネス、労働、投資の自由度などなど10項目で採点されている。世界的にも権威のある指数であり、香港の25年連続第1位は、それだけ香港の優位性を象徴している。

一方、香港が国際金融センターとして中国本土への集金マシーンとして機能している以外の部分では、近年ややその存在感を失いつつある。金融センター以外の部分ではあまりにも中国本土が成長してしまったために、その存在意義が失われつつあるともいえる。

国際金融センターとしての地位はシンガポールに迫られており、いずれはトップの座を明け渡すことになる可能性が高い。実際に、金融機関の一部はすでにシンガポールに脱出を図っているとも言われる。

戦争が起きない限り金融システムは揺るぎない

1国2制度の期限が、あと30年を切った現在、今後は「2047年問題」が香港を苦しめる可能性は高い。逃亡犯条例の改正で4人に1人がデモに参加した状況を見ても、香港人の不安や焦りは想像できる。

いずれにしても、香港の未来は今回の香港デモによって、やや不透明感を増したと言っていい。とはいえ、香港に海外口座を持っている人もいると思うが、こうした金融システムが揺らぐようなことはまずないと考えていいだろう。

金融システムの根幹が揺らぐような事態というのは、もはや「内戦」や外部との「戦争」しか考えられない。世界有数の国際金融センターにそんな事態が起これば、日本の株式市場や債券市場も無傷では済まない。

それどころか、日本が世界最大級のダメージを受ける可能性もある。香港に資産を置いておくのも、日本に置いておくのも緊急事態のダメージはそう変わらない、ということだ。

ただ、これまでもそうだったように中国は時間をかけて香港から自由を奪っていく可能性はある。シンガポールなど、自由度の高い金融機関へのシフトを長期的な視野で考えておいたほうがいいのかもしれない。

日本が悩まされている「キャピタル・フライト(資本流出)」は、今後香港や中国が経験することになるかもしれない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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