香港の混乱が中国のアキレス腱になりうる理由 国際金融センターで何が起きているのか

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2047年といえば、まだ遠い未来のことのように思えるが、住宅ローンなどを組む際には、すでに影響が出てきていると言われる。実際、日本から香港に進出している企業や投資家の一部には、シンガポールなどに拠点を移そうとする動きが現実になっている。

かつて、天安門事件直後に香港市民に取材したとき、5分の1程度の市民は「返還までに海外に脱出したい」と答えていたのを思い出す。近年、一度海外脱出した香港市民がまた香港に戻ってきた話をよく聞く。今回の香港デモが彼らに与えた影響は極めて大きかったようだ。

当然のことながら、欧米の銀行や証券会社、投資運用会社なども、シンガポールや東京などに拠点を移す動きが出てくる可能性もある。かといって、金融市場のルールや銀行口座のルールなどはそのまま継続する可能性が高い。香港は、預金保険なども金額こそ800万円程度と少ないが、外貨預金も保証の対象となっており、海外からの顧客にとっては日本よりも充実していると言える。

香港と言えば、「HSBC」や「シティバンク」、日系の「NWB」といったポートフォリオを組んで資産運用してくれる「ポートフォリオ・アドバイザリー・サービス」を展開する銀行が有名だが、こうした金融機関も1国2制度の見直しがあった場合、どんな変化を余儀なくされるかは不透明だ。少なくとも、優位性のあるファンドの組成や世界中の債券に優先的に投資することはできなくなるかもしれない。

それだけ香港が持つ国際金融センターの機能は大きいということだ。

シンガポールに脅かされる香港の経済自由度

実際に香港の国際金融センターとしての位置付けは極めて確固たるものがある。最新の「世界金融センター指数」を見ても、香港は世界第3位に入っている。トップ10は次のとおりだが、香港は前年に続き3位に入っている(第25回、2019年3月発表)。

1. ニューヨーク
2. ロンドン
3. 香港
4. シンガポール
5. 上海
6. 東京
7. トロント
8. チューリヒ
9. 北京
10. フランクフルト

注目すべきは、上海と北京がそれぞれトップ10に入ってきており、今や中国も国際金融センターの仲間入りしていることだ。とりわけ上海は東京より高い5位に入っている。それだけ、中国も香港に代わる国際金融センターの育成に力を注いでいるということだろう。

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