米国エアバッグ事故、大規模リコールの代償 優良企業の蹉跌

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エアバックの異常な作動

自動車の安全に関する裁判では、多くの訴訟が公判に至る前に内々で和解される場合が多い。タカタやホンダなど自動車メーカーの内部記録も裁判で公表されておらず、技術者や会社幹部が証言台に立った経緯もない。

そうした状況の中、パーハムの死から4年、その原因になったと家族が訴える車が製造されてから12年、問題の深刻さが昨年、大規模リコールという形で改めて表面化した。

タカタは米安全当局に対し、エアバッグのインフレーターに加圧不足や過度の湿気にさらされたガス発生剤が組み込まれたものがあったことを認めた。さらに品質管理が不十分だったことも報告している。

ホンダによれば、2002年11月、タカタは工場従業員に対し、週末などの非稼働日の前には、ガス発生剤が乾燥した倉庫に保管されていることを確認するよう指示した。タカタの顧客である別の自動車メーカーから、湿気がガス発生剤の品質に影響を及ぼす可能性を指摘されたためだ。

米当局に対し、ホンダは2004年の時点でエアバッグに異常な作動があったことを把握していたが、その問題について再認識したのはパーハムの死亡事故が起きた後だったと報告している。

パーハムの死亡事故を受け、タカタは矢継ぎ早に行動を起こした。タカタ経営陣に近い匿名の元同社関係者によると、同社はドイツのエンジニアリング会社に調査を依頼し、ガス発生剤に関連する問題も含めさまざまな要因が見つかった。しかし、調査は明確な結論を出すに至らなかったとその人物は言う。

エアバッグの安全基準は、他の部品とは桁違いに厳しい。ホンダのエアバッグ事業を主導した小林によると、通常の自動車部品に求められている故障率は1000分の1。ブレーキなどの重要保安部品は、それよりも厳しいことが多く、1万分の1から10万分の1とされる。エアバッグの場合はさらに厳格で、故障率は100万分の1以下でなければならない。

小林は、自著の中で、そうした厳しい故障率が達成されているかどうかを走行実験や人間による検査で測ることは難しい、と書いている。

品質管理にはもう一つ、やっかいな問題もある。エアバッグの製造がそもそも危険を伴うという点だ。インフレーターに用いる火薬の扱いは危険性が高く、タカタや競合他社を含む多くの製造業者が、工場での爆発や火災を経験している。今は最も危険な作業をロボットが行い、作業員は厚い壁の向こうからカメラでロボットを誘導する。また、作業員たちは静電気を起こさない特別な靴を履くよう義務づけられている。

「それが(エアバックの)工場を周囲に何もないところに建設する理由だ」。1990年代にタカタと協力してインフレーターの開発にあたったロケットリサーチ社の元エンジニアは、静電気などによるわずかな火花が壊滅的な事故につながりかねない危険性を強調する。

タカタによる工場の安全管理はどうだったのか。元従業員たちは、会社側の経営全般には批判的だったにもかかわらず、安全管理については「よくやっていた」と振り返る。タカタは常に安全面での提案には前向きだったという。

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