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「悪口」を文豪が語るとこんなにも人間くさい 相手を鋭く刺したり、単に感情的だったり

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昭和2(1927)年
4月13日(水曜)
日夏耿之介(ひなつこうのすけ)は馬鹿。あの詩は空腹の沿革の形象だ。
堀口大学、おまえがどうして男と生れて来たやら。おまえが少女と生れなかったからには意久地があったものとみえる。その意久地とは蓋し品性下劣に関する。
(42ページより)
昭和10(1935)年
11月21日
《中略》中村光夫ーーこれは今大評判の批評家だ。然しみているがいい。「老獪な秀才」でしかないことがやがて分るから。尤も、老獪にしろ何にしろ、秀才さえもが珍しい当今文壇のことだから、表向きは、中村光夫を褒める方が賢明なことであるということ。

(45〜46ページより)
12月14日
フランス語。「ツアラツストラ」を読む。なんと面白くない本だ。やっぱり独乙(ドイツ)人はバカだ。生の無意識を暴くことを面白がっている。創造的どころか。渋っ面的だ。かりに俺がこの本の凡(あら)ゆるページに同感だとしても猶、俺はこの本を軽蔑するだろう。何故ならば、生がおのづから知っていることを今更解明されたって、俺は何一つ享(う)けたことにはならぬ。そしてここに書かれてあるようなことは、生が無意識に体得してゐる時にだけ美であるので、意識に移した時何事でもない所のことだからだ。こんな本を書いた男が発狂したとなら、結構なことだ。ニイチェは、何物でもない。奢慢(本文ママ)な、強欲漢だ。

(46ページより)

感情をむき出しにしているからこその憎めなさ

ほかにも志賀直哉、夏目漱石、菊池寛、永井荷風ら、そうそうたる面々の悪口が本書には掲載されている。女性をめぐって絶交した谷崎潤一郎と佐藤春夫の書簡なども、なかなかに読み応えがある。

また注目に値するのが、大正期に腐敗や不正を暴き続けたジャーナリストとして知られる宮武外骨が発行した雑誌『スコブル』に掲載された文壇ゴシップだ。

『文豪たちの悪口本』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

いうまでもなく彼らはその悪口に、相手に対する批判的な、あるいはネガティブな思いを込めていたわけである。しかし傍観者としてそれらを読んでみると、ついほほ笑んでしまうような、不思議な親しみやすさを感じる。別の表現を用いるなら、憎めないのだ。

感情的な表現であるからこそ、悪口は必然的に人間くさくなるということなのかもしれない(もちろん、自分が日常生活の中でこういった言葉を投げかけられたとしたら、それはそれでたまったものではないのだが)。

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