東大生が断言!地理は「考える力」を爆上げする なぜ東大生には「地理好き」が異常に多いのか

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例えば、トランプ氏の台頭も、地理で説明することができます。

地理では産業を学びます。その中でも自動車産業は大きくクローズアップされ、日本の車は小型で低燃費、アメリカの車は大型だが燃費が悪いことがあると習います。これだけでは「ふーん、そうなんだ」という程度の話ですが、この結果を考えていくと、思わぬところにたどり着きます。

ポイント1:日本車に押されてアメリカ自動車産業が斜陽に

まず小型で低燃費な日本の車は、石油危機で省エネが叫ばれて以降、アメリカをはじめとする先進国で高い評価を受けることになりました。

その結果、アメリカの大型車よりも日本の小型車が売れてしまい、デトロイトをはじめとするアメリカ北部の自動車会社は衰退。大量の失業者が出てしまいます。この後、アメリカの産業の中心はカリフォルニア州をはじめとするサンベルトへと移動することとなり、ますます北部は衰退してしまいます。

ポイント2:衰退地域に根強い「保護貿易」への期待

そしてトランプ氏はもう一度強いアメリカを取り戻すためにと保護貿易を公約に掲げて立候補したわけですが、「日本車を輸入したことによって俺たちは職を追われたんだ! 自由貿易なんてダメだ、保護貿易だ!」と考える北部の人たちの票を取り込むことができたのです。

日本の車によって職を追われた北部の人たちからの熱い支持を受けたことで、トランプ氏は選挙に勝利した……そんなふうに考えることもできます。こうした自動車をめぐるアメリカと日本の摩擦に関しては、東大の問題でも問われたことがあります。

地理は「活用できる知識」の宝庫だ

このように、いろんな物事の原因を探っていくと、実は地理の知識で説明できてしまうことが多いのです。

東大をはじめとする国公立大学や、2020年入試改革以降に求められる能力というのは、「最低限の知識量を前提として、その知識を活用するための思考力」であるといわれています。

100個の知識を覚えるのではなくて、10個でいいから、その10個を活用して別の10個を自ら作り出せるようになる必要がある。そう考えたときに、地理というのはその「最低限の、活用できる知識」になりうるのです。

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地理を知っておけば、ほかの物事にもつなげることができる。たくさんの教養を身に付けるのではなく、地理を身に付けることで、いろんな教養にアクセスするための術を持つことができる。これが、東大生が地理を学ぶ理由なのです。

いかがでしょうか? 実は2022年から、選択科目でしかなかった高校地理が必修科目になることが明らかになっています。人間の数千倍もモノを覚えられるというAIが台頭し、人間の職を脅かすといわれているこれからの時代を生き抜く思考力を養成するためには、地理の勉強をする必要があると考えられているわけです。

みなさんも、地理を勉強し直すことで、これからの時代に必要な教養を身に付けることができるはずです。ぜひ、やってみてください!

西岡 壱誠 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当

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にしおか いっせい / Issei Nishioka

1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。

そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。

著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった。

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