指輪、結婚式、ハネムーンは「なくてもいい」 実はフツーな山里亮太・蒼井優の「ナシ婚」

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ちなみに2015年時点の東京と新潟の平均初婚年齢は、男性では32.4歳と30.8歳、女性では30.5歳と29.3歳と大きな開きがある。いずれも東京は全国最高である(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2017)」)。しかもこれは結婚した、「できた」人たちの平均だ。そこで25~29歳女性の未婚率をみると東京は68.3%、新潟は59.7%! 地元を大事にする横澤さんが、東京の若い女性より強い圧力を感じたことも不思議ではない。

「結婚を念頭に」という宣言の意味

さて、「婚活」では女性側は働いていることが大事だとよく教えられる。相手の経済力に頼る必要がないので、相手の経済力の選択肢が広がるからだ。その意味では、結婚後も仕事を続ける横澤さんや蒼井さんはこの法にのっとっている。

また山里さんが付き合う時点から「僕、正直結婚を念頭に置いております」といったのも、恋愛相手と結婚相手を切り離し、後者を重視する婚活が広まった現代だからこそ、抵抗感なく受け入れられるセリフだ。「婚活」によって結婚したわけでもない彼女/彼らも「婚活」時代のなかにある。

もちろん「古い」から悪いとか、「新しい」からいいとか、そういった話ではない。海外クラブで挑戦するスポーツ選手と、国内で活躍するタレントが一緒に住もうとすれば、後者は仕事をセーブしなければいけないかもしれない。

世界的に活躍するとても優秀な研究者であっても、家族や子育てのために研究環境を落としても祖国に帰らなければならないかもしれない。こうした人生の選択を嫌って別居婚というカップルもいれば、別れを選ぶカップルもいるだろう。それぞれのカップルが、それぞれのカップルにとってよい選択肢を選べばよい。

それは結婚や家族の形が「古い」ものもあれば「新しい」ものもあり、部分的に古かったり、部分的に新しかったりもする、多様化する時代だということだ。そして、私たちは前提としてそのスペクトラムの広さを知って、自らに好ましい結婚を広い選択肢のなかから選び出すべきだし、また他者の選択を受け入れる度量を持つべきなのだろう。

佐藤 信 東京都立大学准教授

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さとう しん / Shin Sato

1988年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院法学政治学研究科博士後期課程中退。博士(学術)。東京大学先端科学技術研究センター助教を経て2020年より現職。専門は政治学、日本政治外交史。著書に『日本婚活思想史序説』(東洋経済新報社)、『鈴木茂三郎』(藤原書店)、『60年代のリアル』(ミネルヴァ書房)、共編著・共著に『政権交代を超えて』『建築と権力のダイナミズム』(ともに岩波書店)、『天皇の近代』(千倉書房)、『近代日本の統治と空間』(東京大学出版会)など。

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