労基法違反の武田薬品、遠いメガファーマの道 急速なグローバル化の陰で社内にきしみ

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是正勧告を受けた社員やその上司らに聞き取りをした結果、武田の人事部門は「上司と部下のコミュニケーションの問題が主因」と判断しているようだ。上司は部下の仕事ぶりをみて、過重だと思えば、部下と話し合って上限を超えないように解決策を出す必要がある。一方、部下は早めの相談が求められるが、今回は両者間のコミュニケーションに問題があったというのだ。

ただ、この説明にはやや無理がある。複数の武田OBは、昨年春以降のシャイアーとの買収に絡むタフな交渉が社員の仕事量を増加させたのではないかと指摘する。労基法違反5件のうち3件がグローバル本社で起きていることも、その疑いを強める。

フレックスタイム制や「中抜け勤務」も柔軟に

2018年8月には生産性を向上させるために、これまで以上に働き方の柔軟性を増す制度を導入した。1日の標準勤務時間のうち最低でも2分の1以上は働かないといけなかったという設定をなくし、半日休暇を取得した場合でも残り半日にフレックスタイム制を利用できるようにした。

勤務時間中に病院や銀行に行くなどのプライベートな用事のために、勤務を短時間中断する働き方(中抜け勤務)も、上司の了解を得れば可能になった。在宅勤務に限らず、一定要件を満たせば、自宅以外でも勤務できるテレワーク制度も取り入れた。

ただこれは、従業員には使い勝手のよい制度だが、労働時間を管理する立場からいうと逆に難しい面を伴うものだ。

そこに武田をグローバル企業として脱皮させる、シャイアー買収という過去にない大型案件が重なった。グローバル本社に集う広報や経理、財務、法務、事業開発などの部門は、イギリスに株式を上場し、事業の本拠を置くシャイアーとの折衝が重なる。関係者が「季節労働」と口をそろえるように、時期ごとに訪れる仕事量の多い山がさらに高くなったうえに、柔軟な働き方導入により、労働管理やコミュニケーションの高度化が要求されるようになった。

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