7兆円買収を強行する、武田ウェバーの焦燥 国内史上最大の買収に募る「不安」と「課題」

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大型買収に打って出るクリストフ・ウェバー社長(写真右)と、ウェバー氏にトップの座を禅譲した長谷川閑史相談役(写真は2014年のもの、撮影:尾形文繁)

日本企業による世紀のM&A(企業の合併・買収)が大詰めを迎えている。

国内製薬最大手の武田薬品工業による欧州製薬大手シャイアーの買収だ。日本時間の4月25日(英国時間は24日)に武田とシャイアーの両社は声明を発表した。

武田とシャイアーは4月25日の午後5時(現地時間)としていた買収意図の表明有無を5月8日まで延ばすことで合意している。武田はその間にシャイアーの資産査定(デューデリジェンス)を済まし、最終合意への時間的余裕を得た格好だ。

24日に武田が出した5回目の買収額引き上げ案に対し、シャイアーの取締役会は、一部条件の詰めは残っているものの、今回の武田による申し出を「自社の株主に推奨する用意がある」と明記した。両社経営陣の間でほぼ合意できた、と見てよいだろう。

買収成功なら日本初のメガファーマ誕生へ

武田の提案内容はシャイアー株すべてを1株当たり約49ポンド(約7400円)で買い取るというもの。支払いは、現金21.75ポンドと27.26ポンド相当の武田株の組み合わせになる。買収総額は約460億ポンド、日本円で7兆円近くになる。

買収交渉が表面化した3月28日の提示額からは10%強の引き上げとなる。そのうち現金部分は当初16ポンドだったが、シャイアー側が「企業価値を著しく過小評価している」と4月13日の3回目の提案までは拒絶。結局、武田側が粘り強く総額と現金比率を増やすことで、成立寸前にこぎ着けた格好だ。

これまでの日本企業による海外企業買収の最高額は、2016年のソフトバンクグループによる英半導体設計会社アーム・ホールディングスを約3.3兆円で買収したものだった。今回のディールはこれを倍以上も上回るほか、大型買収が相次ぐ製薬業界にあっても、2014年の米アクタビスによる旧アラガンの買収(約660億ドル)以来の大型案件となる。

クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは「今回の買収で日本初のグローバルメガファーマが誕生する」と前向きに評価する。

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