労基法違反の武田薬品、遠いメガファーマの道 急速なグローバル化の陰で社内にきしみ

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5月24日にはグローバルHR日本人事室名の「【至急・緊急】時間管理におけるコンプライアンス順守の再徹底」、6月7日には「時間管理におけるコンプライアンス順守徹底に向けた私たちのコミットメント」と題した文書が日本国内の全従業員に送付された。

武田の国内部署のトップ18人が法令順守を訴えた(編集部撮影)

ともに法令順守の徹底を訴える内容で、「法令違反に抵触する事案が複数の事業場で再三発生しています。(中略)きわめて深刻な状況です」などと危機感をあらわにしている。

とくに後者は、国内部署のトップ18人が宣誓・署名する形をとっている。CFO(最高財務責任者)のコスタ・サルウコス、日本ビジネス部門トップの岩﨑真人の各氏ら、武田の最高執行機関であるタケダ・エグゼクティブチーム(TET)メンバー数名を含む上位管理職が名を連ねている。

主要部門トップの連名で危機感を共有?

国内主要部門のトップが連名で従業員に法令順守などを訴えるのは武田では初めてのこと。危機感の醸成と共有が狙いだろうが、内部告発は「これはあくまでも労働基準監督署に向けたポーズであり、(中略)労基法違反について真剣に受け止めている、と見せかけるために送信されたメールである」と手厳しく批判している。

そして、最大の疑問はトップのクリストフ・ウェバー社長のこの件への肉声が武田の社内外に伝わってこないことだ。一連の問題について、トップがどのように考え、どのように解決していくかを聞きたいところだが、今のところウェバー氏は音なしの構えだ。

6月27日の株主総会では、議決権行使助言機関のISSが、ROE(自己資本比率)が低いことを理由にウエバー社長の取締役選任への反対推奨を突きつけている。

武田OB株主や創業家の一部からなる有志団体「武田薬品の将来を考える会」も、昨年のシャイアー合併反対に続き、今年の株主総会でも損失発生時に経営陣に役員報酬の返還などを請求できる「クローバック条項の定款への採用」「全取締役の個別報酬も開示」を株主提案している。

株主総会でウェバー社長はどんな説明をするのだろうか。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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