運動不足で寝たきりが決して他人事でない現実 関節の動きが悪くなると衰えは加速する

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自分のことを自分でこなし楽しく生活し続けるには、体を動かす習慣が不可欠です。関節も筋肉も骨も、適度に刺激しないと日常生活すら過酷なものになりかねません。もちろん日々の刺激が足りないと体は弱っていくため簡単に病気や怪我をし、高齢者であればそのまま要介護状態になることもあります。

このような衰えは高齢者に限った話ではなく、若い世代の方も適度に体を刺激しないと、若くして老化したかのような状態に陥りかねないのです。

運動習慣があるかどうかが人生を左右する

運動習慣をいかにつけていただくかは、予防医学における最大の課題です。しかし、どうお伝えしても実践いただくのは本当に難しいと痛感しています。最近は当院の入院患者さんでも、入院中は懸命に体を動かしていたのに退院したらパッタリ運動をしなくなった、というケースをよく見るようになりました。

世の中が便利になるにつれ、体を動かさずにできることは増え続けています。その一方で、動かさなくなればなるほど体は「動かす機能は必要ない」と判断するため、衰えは加速します。

とはいえ不便な暮らしに戻ることは難しい。そうすると現代においては、体を動かす習慣を身に付けることこそが人生の後半を楽しく過ごせるか苦しいものにするかを決める、と言っても過言ではありません。

体を動かさないことによる筋力の低下は、若年・中年層も無視できなくなっています。厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、運動習慣のある人(30分以上、週2回以上を1年以上継続)は、20〜50代では20%程度しかいません。

デスクワーク中心で移動はタクシーや車、エスカレーターに頼りきりで買い物もインターネット。そんな生活を続ければ、若くして筋力や活力の低下という、将来に禍根を残す負債を抱えます。「寝たきり」にならないよう自ら健康維持に努めることは、今以上に大事になるはずです。

ただ運動習慣のない人が、いきなり運動を始めるのは難しいと思います。筋力だけでなく体の柔軟性も低下しているため、せっかく運動をしたとしても痛みを呼んで継続が困難になるケースがあるからです。ここでは、動きが悪くなることで痛みや不具合が起きやすい肩、背骨、股関節に絞って話をしていきましょう。

肩には、上腕骨と肩甲骨の間と 肩甲骨と鎖骨の間の2カ所に関節があります。さらに胸鎖関節を加えた3カ所の動きがスムーズだと、腕はよく動くのです。運動不足などで体が硬くなった人は、とくに肩甲骨の動きが悪くなります。肩甲骨の動きが悪いと肩の動きも悪くなり、肩や首のこり、偏頭痛など、さまざまな不調が現れ指の働きも低下します。

肩回りの代表的な不調は、いわゆる四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)。使わないことによる筋力低下、腱鞘炎、腱板がすり切れて弱くなる、などで肩周辺の筋肉や腱に痛みが生じます。そして上腕二頭筋長頭腱炎を発症すると、痛みで腕をねじる動作が難しくなるのです。

例えば頭の後ろや背中、腰に手を回せなくなっていきます。すると髪をセットできない、背中のジッパーを上げられない、帯やエプロンのひもを結べない、湿布を貼れないなど、日常生活で困るシーンが増える一方に。中でも困るのはトイレです。手を後ろに回せないと、下着などをしっかりと引き上げられなくなるのです。

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