運動不足で寝たきりが決して他人事でない現実 関節の動きが悪くなると衰えは加速する

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背骨の動きを保つには、日々のケアとして上体をしっかり伸ばす、左右に曲げる、ねじるなどの動きを、できる範囲で繰り返すことが効果的です。また、両手を大きく左右に広げたり肩甲骨を寄せたりする動きは、胸を広げ背部を伸ばします。

背骨をよく動かすうちに、棒のように固まった体もほぐれてきます。上体の硬直がなくなれば呼吸も楽になり、息切れしない体を取り戻せるでしょう。

高齢になると脚の付け根にある骨が折れる「大腿骨頸部骨折」が増加し、この骨折が原因で要介護状態になる方もいます。 原因は、骨粗しょう症により骨がもろくなるから。ちょっとしたことで卵の殻が割れるようにパリッと折れます。

また長期間の入院・入所などで歩かない期間が長引くと、脚を大きく開いただけで骨折することもあります。このような骨折の予防に効果的なのは、普段から股関節をよく動かしてなめらかな動きを保つことです。

股関節がよく動けば、足がもたつかない「転ばない体づくり」にも役立ちます。逆に動かさなければ、たとえ骨や関節にいいと言われる薬やサプリメントを摂っても効果は薄れるでしょう。

40代でも歩く機会が少ない人は注意

40代でも、歩く機会が少ない人は要注意です。脚を大きく動かす機会を失うと関節は固まっていくからです。股関節の動きをなめらかに保つには、脚の付け根を大きく動かす運動が効果的です。

大きく前後左右に踏み出す、脚を付け根から内側・外側に回すなど、さまざまな方向に動かしましょう。普段あまりしない動きを取り入れつつ、さまざまな刺激を与えるのが有効です。

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骨には、一定以上の刺激を与えると丈夫になる性質があります。歩くだけでもある程度は刺激になりますが、できる範囲で片足立ちになったり踏み込んだりしたほうが効果的です。

また、脚を付け根から持ち上げる動作は腸腰筋を鍛えられるため、転倒予防や歩行の安定につながります。階段を上ったり早歩きをしたりするのもいいでしょう。病気や怪我を抱えている方は、医師と相談のうえ実践ください。

高齢の方の転倒予防に、そして若年・中年の方の健康維持や親御さんを要介護状態から遠ざけるために、お役立ていただければ幸いです。

林 泰史 医学博士、原宿リハビリテーション病院名誉院長

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はやし やすふみ / Yasufumi Hayashi

京都府立医科大学医学部卒。整形外科医として東京大学整形外科学教室入局後、整形外科・リハビリテーション科を中心に高齢者医療に携わる。東京都老人医療センター病院長・東京都老人総合研究所所長、東京都リハビリテーション病院病院長などを経て、2015年より原宿リハビリテーション病院名誉院長。

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