「メディアの衰退」が異形のリーダーを生む必然 先行する「アメリカの危機」に学ぶべき教訓
トランプ現象は新南北戦争
安倍晋三首相は5月26日、訪日したアメリカのドナルド・トランプ大統領と約3時間、ゴルフに興じた。政治手法も協調性や誠実さとは対極の独裁・専横型が特徴の大統領は、ゴルフでもやりたい放題のトランプ流で知られる。迎えた安倍首相は、対照的に「日米連携」重視で協調プレイに徹したようだ。
トランプ登場から2年半、超異形の怪物リーダーを生み出したアメリカでは、政治も社会もメディアも分断・分極化が空前の勢い、と評する声が強い。まれに見る独裁・専横型の大統領が登場したのが原因なのか、深く静かに進行していたアメリカ社会の分断・分極化現象がトランプをトップに押し上げたのか。
アメリカ生活数十年の霍見芳浩・ニューヨーク市立大学名誉教授は、筆者との雑誌対談(月刊『ニューリーダー』2017年10月号掲載)で、「トランプみたいなのが出てくるとは思っていました。トランプ現象は『新南北戦争』ですよ」と指摘した。
南北戦争(1861~1865年)から 100年後の公民権法制定(1964年)の後、現在までの約半世紀、全米に散らばった南部の白人の係累の票を固める政権戦略を展開してきた共和党と、公民権運動を推し進めた民主党の根深い対立が分断・分極化を促進させた、と霍見氏は分析している。
もともとカジノ・ホテル運営会社や不動産会社の経営者の出身で、政治の世界ではアウトサイダーだったトランプ氏は、分断・分極化が著しいアメリカ社会で、一方の側の熱烈な支持を武器に大統領選挙を制した。「ビジネスマンとしての成功」もさることながら、「テレビの有名人」というもう一つの顔が勝利の決め手となったといわれている。
テレビで人気者となり、白人のブルーカラー層などのハートをつかんでのし上がった点に着目すると、メディアが生んだ大統領という一面も否定できない。であれば、アメリカのメディアと政治の関係も気になる。
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