工場の"ゴミ"を売る、プリマハムのすごい情熱 「微生物」に魅せられた男の会社員生活

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プリマハム基礎研究所は、生産工場と同一敷地内にある(写真:筆者撮影)

――その余剰汚泥を、以前はどのように処理していたんですか?

余剰汚泥は、いわば泥水の状態です。そのまま廃棄するのは、水を捨てるに近い状態ですから、プレスして濃縮・脱水します。その後は、産業廃棄物として有料で業者に引き取ってもらうことになります。茨城工場では2007年度には年間1507トンの汚泥を排出しましたが、産業廃棄物としての余剰汚泥はゼロにできました。

――そういった取り組みは、コストが合わないことが多いと聞きますが、採算は取れているのでしょうか?

茨城は都心に近いので、ゴミ処理費用が高かったんです。そのため茨城であればペイしています。コスト面にはやはり課題があって、弊社の全工場で導入できているわけではありません。

「こうなったらいいな」は微生物にやってもらう

――ワーストの2つ目「動植物性残渣」を減らす研究もされたそうですね。そもそも「動植物性残渣」とはなんでしょう?

弊社の場合はほとんどが肉です。肉製品を生産する過程で出てくるゴミのことです。ソーセージ類も作っているので、とんかつ用の肉を作るような工場よりは少ないはずなんですが、それでも大量に出ます。仕損品なども含まれます。

――その肉のゴミは、どうやって減らすのでしょう?

私は食中毒の原因となる菌を増やさない研究など、微生物を専門にしていました。ですので、排水処理と同じで、微生物に食べさせればいいんじゃないかと考えて、生ごみ処理機を量販店で買ってきて試しました。けれども、まったく減らなかったんです。

――生ごみ処理機は、肉やソーセージを処理できないんですか?

いろいろ調べていくと、肉だけを分解するのは、なかなか難しいことがわかってきました。通常家庭から出る生ごみは、ご飯、野菜などいろいろな素材が入っていますが、工場ではほぼ肉のみです。そこで、自然環境中から優秀な微生物を探してくればいいと考え、全国各地を探しました。

――全国各地を探すというのは、どういった作業になるんですか?

どこかへ出掛けたときに気になる場所があれば土を取ってきます。あと、弊社は北海道と鹿児島にも工場があるので、全国から人が集まってきています。帰省する際に土などを持って帰ってきてほしいと頼んだところ、みんな熱心に探してきてくれました。

場所によって存在している菌は、まるで違うんです。肉眼では見えないのに、さまざまな特徴をもつ微生物が至る所で活躍しているんですね。ですので、見つかっていない有能な微生物はまだいっぱいいると思います。

私はこの仕事に携わってから、微生物が面白くて、今もずっと探しています。2年くらい前までは、いつでも土を持ち帰れるようにと、袋を持ち歩いていました。

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