――微生物は顕微鏡で見ただけで、さかなクンが魚の品種を特定するかのように、種類がわかるものなのでしょうか?
わかりません。多少はわかりますけど、何に効果があるのかはわかりません。人間と一緒で、微生物も生き物なので、似たような菌でも能力がまったく違うことがあります。
微生物は、“日本人”のようなくくりの“属”があって、その下に種、亜種などいろいろあるのですが、その分類だけでは話はできません。属はこういうものだとは考えてはいけないんです。日本人であっても、親戚であっても、兄弟でも個性は違うじゃないですか。株という言い方をするんですけども、そのレベルでいい菌がいないか探します。
――では、集めてきた数百、数千の微生物を、どうやって調べるのでしょうか?
例えば人間であれば、速く走るやつが欲しいなら一斉に走らせて、タイムのいいやつを取る、いわゆるスクリーニングと呼ばれる手法ですけれども、そうやって優秀な微生物を選抜します。
肉を分解する微生物が欲しいという場合、肉を分解させるのは大変なので、その前に、タンパク質を分解する能力があるかを調べます。それは簡単な実験でわかります。
タンパク質を寒天培地に溶かし込んで、微生物を置きます。しばらくすると、タンパク質を分解できる微生物なら透明になってきます。肉は主にタンパク質と脂肪なので、脂肪を分解する能力があるかどうかも見ます。最初は、そういうふうにして選抜します。
1次、2次試験…すべてのハードルを越える微生物を探す
――1次試験を突破した微生物に、また次の試験をやらせて、選抜していく感じなんですね。
次のハードルは、フラスコにおがくずのようなものと、肉をちょっと入れて分解させました。分解されると、水とか二酸化炭素が発生するので、ビシャビシャになるんです。こういったところを観察して、さらに選抜します。
次に試験管での試験です。食肉製品は塩が入っていますが、微生物は塩は分解しません。塩が多いと一般的には微生物は増えられないのですが、塩の濃度が高くなっても増えられる微生物を探します。試験管でpH(酸性・アルカリの程度)や、塩の濃度、培養温度を変えたものなど条件をつけて、それでも乗り越えて増える微生物を選びました。
最終的に5株まで選んだあと、実機の家庭用の生ごみ処理機とか、業務用の生ごみ処理機で本当に肉を分解するかを確認しました。この微生物を商品化して、生ごみ処理機メーカーなどに売っています。
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