サントリーが巨額買収、世界市場攻略の成否 米蒸留酒大手を1.7兆円で買収、グローバル化へ大勝負に出た

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グローバル化のみならず、佐治社長は利益率の向上をかねて重視してきた。この点でいえば、サントリーの営業利益率約6%に対し、ビーム社は20%台と高い。しかも、世界全体のスピリッツ市場は約1700億ドル(12年度、小売金額ベース)で拡大が続いている。ブランド力があれば高い単価で売れるため、市場拡大とともに収益も期待できる。「ビーム社とサントリーのラインナップは、種類や価格帯などで補完的」(サントリー広報)という。

160億ドルの買収金額は妥当か

気になるのは買収金額の妥当性だ。SMBC日興証券の沖平吉康シニアアナリストは、「買収金額はビーム社のEBITDA(税引前利益に支払利息や減価償却費を加算)の20倍以上だが、食品業界は10倍台前半が一般的。今回の案件を安いと言う人はまずいない」と話す。

買収額から推定されるのれんは約9000億円。20年で償却しても年間約450億円が経費として発生する。この処理があるため、ビーム社の利益(12年12月期の営業利益は約600億円)をそのまま享受できるわけではない。

ただ、前出の沖平氏は、「確立されたブランドを買うのがサントリーの特徴。卸の手数料改定などコスト削減でビーム社の利益率はさらに上がる可能性もある。長い目で見れば悪い買い物ではない」と評価する。

今回の買収に伴う借り入れで、サントリーの有利子負債は1兆円以上増える見通し。借り入れをテコに大型の買収を繰り返し、財務をさらに悪化させると、格付け低下から資金調達コストの上昇につながる。小粒の買収が散発するとしても、超大型案件はこれで打ち止めだろう。

いっそうのグローバル化に向け、ビーム社の持つブランドをどれだけ有効活用できるのか。明確な相乗効果を生み出せなければ、乾坤一擲の買収は高値づかみになりかねない。

週刊東洋経済2014年1月25日号(1月20日発売)核心リポート01

→ サントリーHD、ビーム社巨額買収の勝算(カンパニー&ビジネス)、会社四季報オンライン

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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