家電各社が熱視線、"ライフログ"とは何か 「スマホの次」を読み解くキーワード

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従来、人間の生活記録といえば、せいぜい日記が中心だった。その後、インターネットの発達によって、ゴードン氏が描く「ライフログ革命」の時代は、徐々に現実味を帯びている。

たとえばブログが誕生し、自身の生活をブログに綴る「ライフブロガー」なる人々が注目された。さらにスマートフォンが登場。スマホ向けに、ライフログ関連アプリが次々生まれ、「生活を記録する」ことのハードルは下がっている。最近では、スマホに頼らずとも、身に着けるだけで行動履歴を記録してくれるウエアラブル端末が複数登場。こうした機器の普及で、ライフログ市場は徐々に広がっている。

「感動の共有」を目指すソニー

現在、ライフログを掲げるウエアラブル端末には、健康管理のためのデバイスが多い。それらは「活動量計」とも呼ばれ、日々の運動量や消費カロリー、睡眠サイクルといった身体にまつわるデータを蓄積し、スマホで確認したり、SNSに投稿したりできる機器だ。

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LGの「Lifeband Touch」

今回のCESでも、韓国LGエレクトロニクスが、リストバンド型の「Lifeband Touch」を披露したが、これも健康管理が主な用途だ。これは技術的な理由のほか、日々の活動記録の目的としてダイエットなど健康管理のニーズが高く、ビジネスとして成り立ちやすいという側面があるからだろう。

そういう点で、ゴードン氏が語る「ライフログ革命」の世界に一歩近づいた印象を与えたのが、ソニーのCoreだった。

ソニーは、同製品について「記録した履歴を活用することで、過去から現在にわたるユーザーの行動パターンの発見や、未来のコミュニケーションや行動のきっかけになる情報を提供する」と説明している。CESの展示ブースでも、説明員はCoreを内蔵したリストバンドを示し、「自分がいつ、どこで、どんな音楽を聴いて、いいと思ったか。そういった感動を記録して、ソーシャルメディアを通して他人と共有できる」と楽しみ方を説明。「使う目的はエンタテインメントだ」と話していた。

それ以上の具体的な用途は明らかではないが、ソニーは2月にバルセロナで開催される携帯電話関連の見本市「モバイルワールドコングレス」で、追加内容を発表する見通し。他業種との提携なども含め、さらなるライフログの活用法が示される可能性もある。

すでに医療の世界では、ライフログ技術への期待が高まっている。「ゲノムコホート」と呼ばれる、個人の遺伝子情報と暮らしぶりがどう組み合わされれば病気になるかという、因果関係の研究が進んでいるが、「課題は一人一人がいつ、どこで、何を食べたかというライフログをどう取るか」(松田文彦・京都大学医学研究科附属ゲノム医学センター長)。ソニー製品のような、生活全般を記録する製品が普及していけば、個人の暮らしぶりと病気との関連性がより明らかになり、「病気を治す時代」から「病気を防ぐ時代」への移行に寄与するかもしれない。

医療だけではない。個人の行動履歴をベースにした新製品開発、キャリアや新たな学習法の提案など、新たなビジネスチャンスも想像される。当然、蓄積された個人の生活履歴データの乱用を防ぐ、ルール作りも課題となる。「ライフログ時代」は到来するのか。ライフログ関連のウエアラブル端末の広がりが、そのカギとなりそうだ。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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